実は謎が多い水星 探査機「みお」と「MPO」が挑む“宿題”
メッセンジャーによる磁場の観測で生じた謎は、これだけではありません。それは水星の磁場の中心が北におよそ20%ズレているということです。つまり内部構造が偏っている可能性がありそうなのです。前述の通り、メッセンジャーでは南半球の正確なデータが取れていないため、探査機「みお」で水星の磁場を詳しく観測する必要があります。探査機「MPO」で得られる重力の分布と合わせて調べれば、内部の様子が分かると期待されます。
水星探査の先その1:惑星の起源を探る
水星探査で分かるのは、現在の水星の状態、そして断片的な過去の地質記録です。その地質記録と現在の状態をつなぐシナリオでシミュレーションをすれば、水星がたどった歴史を調べられるかもしれません。 水星だけでも面白い話ですが、太陽系内、さらには太陽系外の惑星の起源や環境を知る手掛かりにもなるはずです。一例として、太陽系の外では、中心の恒星のごく近くを回る木星サイズの惑星が多く見つかっています。その起源としては、中心の恒星から離れたところでできた惑星が恒星の近くへ移動してきたという理論があります。水星の移動説を裏づける証拠が得られれば、その理論を支持する重要な証拠になります。
水星探査の先その2:惑星の環境を探る
水星探査での知見は、ほかにも惑星の環境推定に応用できそうです。その鍵を握るのは「磁気圏」です。「磁気圏」とは、太陽風(プラスとマイナスの電気を帯びたガスである「プラズマ」の高速な流れ)が磁場の影響で侵入できない範囲を指します。地球の磁場は、太陽風が地表に降り注がないようにするのに大事な役割を果たしています。磁場をもつ水星には、火星や金星と違って、磁気圏が存在します。 磁気圏は、太陽風から大気や水がはぎ取られるのを守る役割を持っています。例えば火星は、生まれてから数億年間は多くの大気や水があったことが地質記録から分かっていて、同時期には全球的な磁場が存在し、それに伴う磁気圏が存在していたことも分かっています。しかし、現在の火星には全球的な磁場はなく、そして液体の水は少なくとも表面には確認されていません。火星が時間とともに冷えて磁場を失った結果、磁気圏もなくなり、太陽風に大気をはぎ取られた可能性があるとも考えられています。