実は謎が多い水星 探査機「みお」と「MPO」が挑む“宿題”
謎その1:水星はどこから来たのか?
メッセンジャーの探査で逆に深まった難題の一つが「水星の起源」です。1980年代に盛んに研究がされた惑星形成論によると、太陽系の惑星は、ガスや塵が集まって合体し、さらに衝突を繰り返して徐々に大きくなることでできたとされます。この理論に従えば、水星は今の場所かその近くで形成されたことになります。ところが、探査機メッセンジャーは、その予想と反する証拠を見つけてしまいました。
それは、カリウムなどの「揮発性物質」です。温度が高ければ高いほど多く蒸発するので、火星、地球、金星、水星と太陽に近づくほど、惑星にある揮発性物質の量は蒸発して少なくなるはずですが、水星では予想よりもだいぶ多い揮発性物質が見つかっています。ほかにも内側から揮発性物質が蒸発したような、不思議な穴も発見されています。
これらの証拠から、水星は今の場所よりも遠く冷たい場所ででき、今の場所に移動してきたという仮説が生まれました。ただし、メッセンジャーは水星の南半球をしっかり観測できていません。今回の欧州が開発した「MPO」で、表面の鉱物や化学組成を満遍なく探査すれば、水星の起源についてもっと理解が進むかもしれません。
謎その2:内部はどうなっているのか?
水星の内部構造もよく分かっていません。地球のように地震波で調べられない場合、惑星内部を知る有力な手掛かりの一つが、惑星固有の磁場です。地球に磁場が存在するのは、内部に液体の金属の核があって対流しているからと言われています。水星のそばを通過した探査機マリナー10号は、微弱な磁場を観測しました。その後のメッセンジャーは磁場をより詳しく調べ、水星内部に液体の金属核が存在することはほぼ確かとなりました。 実は、小さな水星に液体の金属核があること自体、大きな謎なのです。小さい惑星ほど冷えやすくて金属核が固化しやすく、対流も起こりにくい状況になるからです。水星の表面で見つかっている硫黄が内部の金属核に存在していれば、鉄が融ける温度が低くなって液体でいられると考えられていますが、今のところ、仮説にすぎません。