日銀・黒田総裁会見6月18日(全文2)経済状況が違う中で金融政策が異なるのは当然
4月時点よりは楽観的になれると考えているのか
ロイター:ロイター通信の木原ですけれども、2点お願いします。ワクチンの接種もずいぶん急速に進み始めて、輸出や生産も判断、若干今回、前回の会合対比で前進させていると思います。そういうことを踏まえると、日本経済の年後半以降の回復のパスについては、総裁ご自身は4月の展望レポート時点よりは楽観的になれるというふうなご意見でいらっしゃるのかというのが1点目です。 2点目は先ほど、やはりFEDに比べると、アメリカのインフレに比べると日本はまだインフレも弱い、経済の回復も脆弱ということなので、大規模な緩和を続ける必要があるとのことなんですが、一方で前向きの循環というのが少しずつ働き始めているということも日銀は言っているので、確認なんですが、そうはいっても景気が回復し、好循環が回り始めても、2%の物価目標が達成されるまでは、長短金利操作目標も上げたりしないと、そういう理解でよろしいんでしょうか。 黒田:金融政策は、あくまでも政策委員会の合議で決定されるものですので、その前提として経済をどういうふうに見るかということもいろいろ議論をされた上で政策決定が行われるということでありますので、あくまでも私の個人的な感想というか、見方だということをご理解いただきたいと思うんですが。 正直言って、一方で海外経済、特に今、中国や米国、それに最近は欧州も含めて、回復がかなり急速であって、それがわが国の輸出、あるいは生産にかなりはっきりとしたプラスの影響をもたらし、経済の先行きについて、前に見てたよりも、より積極的というか、明るい展望を持ちうるという面があるということは、私自身そう思っています。
接種進むと対面型サービス消費の回復が早まる可能性も
ただ、他面で、やはり二度目の緊急事態宣言が、2回にわたって延長され、今回、全国、みんななくなるのではなくて、例えば沖縄は緊急事態宣言がそのまま続くと。それから緊急事態宣言が終わったところでも、まん延防止の特別措置とかなんかは取られるというようなこともありまして、対面型消費に下押し圧力がまだ続いているという面があることも事実なので、一概に明るい面だけで、前よりも非常に展望が明るくなったというようにもまだ言えないと思うんですが、私自身はワクチンの接種はかなり急速に進んでいるということは、これは従来みていたよりも相当速いペースで進んでいますので、これは先ほど来申し上げているように、政府の公衆衛生措置の部分だけでなく、人々がどの程度安心して外出したり、対面型サービス消費を享受するかということにも関係しますので、この調子でワクチン接種が進んでいくと、対面型のサービス消費の復活というか、回復が前にみてたよりも早くなる可能性はあるというふうに思っています。 そういう意味では、要するに一方で前向きの点では海外の経済が前にみていたよりも、IMFやOECDや世銀もみんな成長見通しを上方修正していますよね。そういう面のプラス。しかし他方で緊急事態宣言が延びて、対面型サービスに下押し圧力が効いてきたというマイナスの面。しかし、それに対してはワクチンの接種がかなり急速に進んできている、明るい面と。幾つかあるというふうに思っていますが、私自身は全体として前よりも明るい見通しに向かっているのかなというふうには思っています。