オウギワシとフィリピンワシを見逃すな!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法
オガサワラカワラヒワが幻にならないように
最後に、鳥展ではぜったいに見て、知ってもらいたい鳥がいる。それはオガサワラカワラヒワだ。小笠原諸島限定の小鳥で、現在の推定個体数はわずか200羽。日本の鳥の中で、もっとも危機的な状況の鳥といえる。減少した原因は、島の植生の変化と外来種であるクマネズミに食べられたことだという。シミュレーションの結果、このまま何もしないと、15年で絶滅する可能性が高いことがわかり、現在、環境省によって保護増殖計画が実行され、なんとか絶滅を回避する試みがおこなわれている。 この鳥展では、2羽のオガサワラカワラヒワの標本が展示されている。日本では絶滅してしまったキタタキのように標本でしかその姿を見ることができなくなるのは、あまりにも悲しすぎる。保護増殖事業がうまくいって、かつてのように島へ行けばたくさん出会える日が来ることを願わずにはいられない。展示会でしか出会えない鳥は、もう1羽もいらないのである。 なお、今回の特別展は最新の鳥の分類がメインテーマだ。じつは、私が昨年執筆した図鑑、MOVE「鳥(新訂版)」も、この展示と同じ国際鳥類学会議のリストと日本鳥類目録改訂第8版に従って書いている。特別展では多くの鳥の標本を見ることができるが、図鑑ではその鳥たちの生きている姿を写真で楽しむことができる。特別展と図鑑の両方を見れば、より鳥の世界がおもしろく理解できると思うので、ぜひ図鑑を活用して特別展を見学することをお勧めしたい。 特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」 会期:2024年11月2日(土)~2025年2月24日(月・休) 会場:国立科学博物館 〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20 開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
柴田 佳秀(サイエンスライター)