オウギワシとフィリピンワシを見逃すな!鳥類の専門家が徹底ガイド 国立科学博物館の特別展「鳥」が100倍おもしろくなるマル秘鑑賞法
オウギワシとフィリピンワシを見逃すな!
第6章「猛禽類とそのなかま」には、かっこいいタカやワシがつくる標本の山があり、これだけ見ても圧倒されるが、特に注目して欲しいのが、山のてっぺんの下にいる2羽、オウギワシとフィリピンワシである。なにしろこの2種は、サルやナマケモノを獲物とする世界最強のワシとされるのだ。本当はここに、カンムリクマタカが加われば、世界三大ワシが勢揃いなのがだが、今回は不在なのが惜しいところである。 オウギワシの標本は、ものすごくごつい脚を見て欲しい。直径が2.5cmもあり、爪の長さは7cmもある。これはヒグマの爪に匹敵する長さである。この頑丈な脚で、木の上のサルやナマケモノを蹴落として捕らえるというから恐ろしい。 フィリピンワシは、幅の薄い巨大な嘴に注目。これは肉を切り裂くのに適した形で、いってみれば肉切り包丁のような役割をする。なお、このフィリピンワシは、現在たった500羽が生き残っているにすぎない絶滅危惧種で、剥製だけでも見られるのはじつに幸運なことだ。ただ、鳥展では両種は遠くにいて、少し見えにくい位置に展示されているので、よく観察したい場合は双眼鏡を持参されることをお勧めしたい。
これはあの鴆(ちん)なのか? 毒鳥ズグロモリモズ
第7章「小鳥のなかま」は、いよいよ鳥類最大のグループであるスズメ目に突入である。ここでの展示では、12種もの標本が集められたゴクラクチョウとも呼ばれるフウチョウ特集が目玉だが、筆者はあえて違う鳥を推したい。それはズグロモリモズの仮剥製標本である。 ズグロモリモズは、世界で初めて毒を持つことが確認された鳥類である。筆者はその存在を以前から知っていたが、実際に標本を見るのはこれが初めて。まったく期待していなかったので、まさか実物を拝めるとは夢にも思っていなかった。あまりに感激したので、その日にXにポストしたところ、たいへんな反響があり、インプレッション数が673万にもなった。 どうやら人気アニメのキャラクターに、この鳥をモデルにしたピトフーイというのがいるらしく、そちらの方面からの反応や、中国の伝説の毒鳥「鴆(ちん)」との関連を知る人々から、これがその鴆なのかと驚きの反応があったのである。それにしてもこんなレアすぎる標本をコレクションしているとは、国立科学博物館の実力のすごさを感じせざるを得ない。 ところで標本を見るときには、専門家は必ずついてるラベルをチェックする。脚についている札みたいなのがラベルだ。学名はもちろん、採集した場所や日時、採集した人の名前などが書かれているが、それによるとこの標本は、パプアニューギニアで1963年4月19日に採集されたことがわかる。ズグロモリモズが毒を持つと判明したのは1992年だから、この鳥が採集されたときは、毒があるとはまだわかっていないはず。この標本を触ったら手がしびれたりするんだろうか。