考察『光る君へ』26話「中宮様が子をお産みになる月に彰子の入内をぶつけよう」愛娘をいけにえとして捧げる道長(柄本佑)に、権力者「藤原道長」を見た
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。26話「いけにえの姫」では、天変地異に襲われる都を舞台に、道長の娘・彰子(見上愛)の入内を巡るドラマが展開します。一方、新婚のまひろ(のちの紫式部/吉高由里子)と宣孝(佐々木蔵之介)の関係には不穏な変化が……。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載27回(特別編1回を含む)です。
宣孝の財力を感じる
日食と地震が同日に都を襲った。長徳4年10月のこの災害は藤原行成(ドラマでは渡辺大知)の日記『権記』に記されている。先に地震があり、そのあとに日食があったという。 被災したばかりの都の人々にとっては、欠けてゆく太陽、薄暗くなる空はさぞ恐ろしく、絶望感を募らせたことだろう。 地震で崩れたまひろ(吉高由里子)の屋敷に多くの職人たちが入って修理している。地震で壊れたのか、運び込まれる新しい調度品。プレゼントの鏡。パリッとした新しいまひろの着物。 先の筑前守であり現山城守である、宣孝(佐々木蔵之介)の財力を感じる。 衣食住になんの不安もない。妾となり男の庇護下に入るとはこういうことか……と、まざまざと思い知らされる場面だ。
彰子登場
洪水、地震、日食。続く厄災に「朕のせいなのか」と自らを責める一条帝(塩野瑛久)も対応に奔走する道長(柄本佑)も、目の下のクマがひどい。 ちなみに、25話で安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が予言した凶事は、これらに加えて疫病と火事、嵐があった。史実では疫病はすでに起こっている。洪水があった年の長徳4年(998年)5月頃から、都では疫病の「赤疱瘡(あかもがさ/症状から麻疹とされる)」が流行し、身分の上下なく多数の死者を出したと『日本紀略』にある。 同じく25話では女院・詮子(吉田羊)が重い病で、帝に鴨川の堤修復を進言できる状態ではないという場面があったが、実際、行成は蔵人頭として7月8日に女院の病気見舞いをし、12日に行成自身も倒れてしばらく病に苦しんだと『権記』にある。この頃、疫病が蔓延して内裏で仕事をする人が激減し、にっちもさっちもいかなくなったことが記録から察せられる。そして9月に鴨川の堤防が決壊、洪水が起こってしまった。 ドラマでは、一条帝が中宮・定子(高畑充希)のいる職御曹司に入り浸ったために堤防補修工事が行われなかったと描かれたが、実際には疫病により朝廷が機能不全に陥っていたというのが原因としてあるだろう。 道長に、どうすればこの天変地異が収まるのかと問われた安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が出した答えは道長の長女・彰子(見上愛)の入内……。 すでに入内している元子(安田聖愛)と義子(よしこ/未登場)の父がそれぞれ右大臣・顕光(宮川一朗太)と内大臣・公季(きんすえ/米村拓彰)であることを思えば、左大臣である道長が娘を入内させることには、なんの不思議もない。 が、一人の父親としての道長は、ひたすらに娘・彰子を案じる。そして、姉である女院・詮子(吉田羊)に相談した。25話(長徳4年7月)では病に臥せっていた女院だが、26話(同年10月?)ではすっかり回復している。あれが麻疹だったとすると、相当症状は重かっただろう。回復してよかった! 詮子からは、 「お前はいつもきれいなところにいるもの」 「私は失い尽くしながら生きてきた。道長もついに血を流すときが来たということよ」 と告げられる。道長が優しくおっとりとした三郎の部分を残していられる猶予は、もうないということか。 彰子が成長した姿(見上愛)で登場!「まだ子ども」と道長が言ったとおり、このときの彰子は11歳、現代でいえば小学校高学年。田鶴(小林篤弘)の活発さとは正反対の、おとなしそうな姫君……まだ性格はつかめないが、可愛い。とにかく可愛い。道長と親子という説得力ある外見、キャスティングが素晴らしいではないか。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』7話 勇壮な打毬試合に拍手!道長(柄本佑)に絶望するまひろ(吉高由里子)の姿にタイトル「へ」の謎に思い当たる
- 考察『光る君へ』9話 友を埋葬するまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の表情…「ソウルメイト」とはこんな残酷な意味だったのか
- 考察『光る君へ』10話 道長(柄本佑) の激しく熱い恋文に、漢詩で返すまひろ(吉高由里子)の「幸せで悲しい」誓い
- 考察『光る君へ』11話 まひろ(吉高由里子)だって、本気で北の方になれるとは思っていない!倫子(黒木華)と同じ意中のその男性の
- 考察『光る君へ』17話「あの歌で貴子と決めた」道隆(井浦新)が見失わなかった愛、まひろ(吉高由里子)は友への強い思いで筆をとる