考察『光る君へ』26話「中宮様が子をお産みになる月に彰子の入内をぶつけよう」愛娘をいけにえとして捧げる道長(柄本佑)に、権力者「藤原道長」を見た
権力者「藤原道長」へ
長保元年(999年)、安倍晴明より中宮・定子の懐妊……しかも生まれるのは皇子だと告げられ、絶句する道長への、 「呪詛いたしますか?」 ついでにやっときます? くらいの軽さで発せられる安倍晴明の問い。これに「父上(兼家/段田安則)のようなことはしたくない!」と即答する道長に、晴明と一緒に安心する。しかし、 「中宮様が子をお産みになる月に彰子の入内をぶつけよう」 ああ……11話で即位式前、玉座に置かれた子どもの生首を撤去し「穢れてなぞおらぬ」と言い切った男だ。呪術という見えない力よりも、目に見える形で帝と朝廷全体に「定子か彰子か。政治的後ろ盾を失った中宮か、現左大臣を父に持つ新女御か」選ばせるのか。 これはある意味、呪詛よりも恐ろしい力の振るい方である。だからこそ安倍晴明も一瞬たじろいだのだ。愛娘をいけにえとして捧げるのだから、全身全霊本気を出して女御・彰子を支えるのだという父としての気概。ついに道長が私たちがよく知る権力者「藤原道長」へと、己の殻を破った瞬間のように見えて、ゾクゾクした。 そして妻・倫子も、道長個人の権力のためではなくこの国のために、肝を据えた。 「内裏に彰子のあでやかな後宮を作りましょう。気弱なあの子が力強き后となれるよう、私も命を懸けます」 キャーッ倫子様かっこいい!! サロンを切りまわす女主人として磨き抜いてきたセンスと知恵を、娘のために注ぎ込む!! 倫子の作る「あでやかな後宮」が今から楽しみだ。
まさに「いけにえの姫」
バァーン!! と荘厳なパイプオルガンが鳴り響くなか行われる裳着の儀。 強大な力を得る駒を進める男と儀式。このBGMではいつも映画『ゴッドファーザー』を思い出す。 居並ぶ朝廷の重臣たち。身に着けている装束については、前回の特別編で書いた。 成人式であるのに、晴れやかな顔とはほど遠い彰子……まさに「いけにえの姫」だ。 そして、一条帝の寵愛を一身に浴び、自信に満ち溢れた中宮・定子。 伊周(三浦翔平)に、私の大切な中宮様に軽率なふるまいしたらゆるさんぜよと、ぴしりと釘を刺す清少納言(ファーストサマーウイカ)。 道長は勝負ではないと言ったが、そして倫子は命懸けで支えると言ったが、この華やかな中宮・定子と清少納言というタッグから、どう一条帝を引き剥がすのだ……と興味津々である。
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