ドラマ『大病院占拠』最前線で指揮するソニンの演技に注目したいポイント
嵐の櫻井翔が主演するドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系、土曜22時~)はスリリングな展開が毎回SNS上でも話題となっているが、櫻井演じる武蔵三郎と警察学校時代の同期で苦楽を共にした仲、和泉さくらをソニンが演じている。謎の武装集団による立てこもり事件現場の最前線で、物語のハブともいえるポジションにある現場指揮本部長という重要な役どころだ。
シチュエーション限られたドラマで際立つ心理表現
鬼の仮面をかぶった武装集団によって大病院が突如占拠されてしまうところから始まった物語だが、こうした立てこもり事件を描く場合は必然的に現場のシチュエーションがドラマの中心になる。同じようにシチュエーションが限定された同局系の連ドラとしては、2019年に放送された菅田将暉主演の『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』が記憶に新しい。高校を舞台に菅田演じる担任がクラス29人全員を集め、人質に取るという展開が話題になった。また、映画でもワンシチュエーションをジャンルとして確立したとされる『キューブ』をはじめ、状況が極端に限定された作品は数多い。キアヌ・リーブス主演で大ヒットした『スピード』なども、時速50マイル以下になると爆発してしまうバスという状況がスリルを盛り上げた。 このようにシチュエーションを限定した作品では脚本・演出の面白さはもちろんのこと、限られた登場人物がクローズアップされるため俳優の高度な心理表現が面白さを左右する。とくに、一気に2時間前後の尺で見せる映画や単発ドラマと違って連続ドラマの場合は勢いと興味を持続させなければならない。『大病院占拠』では仮面をかぶった“鬼”たちの正体が回を追うごと徐々に明かされていき、その都度新たなキャストが明らかになるという興味の引きつけ方が特徴の一つになっているが、そんな中で現場指揮本部を率いるソニンの演技も主演の櫻井翔とともに作品を牽引する重要なポイントだ。
初めての警察官役 ていねいな芝居に注目したい
警察官を演じるのは、今作が初めてという。2007年のミュージカル『スウィーニー・トッド』、そして翌年の『ミス・サイゴン』あたりから役者として存在感を放つようになったが、それまでアイドル的ポジションにあったソニンにとって本格的に役者へ向かう大きな転機になったのではないか。前者は、大竹しのぶにあこがれオーディションを受けて射止めた舞台で、同じ板を踏むという念願がかなった。当時稽古場で取材をしたが、まるで3Dアトラクションを観ているかのように前に前にと迫ってくるエネルギッシュな演技に圧倒されたのを覚えている。その後も地道にキャリアを重ね、『キンキーブーツ』の日本人キャスト版ではヒロインのローレンをこれまで三度好演している。 5年前、『1789 -バスティーユの恋人たち-』で取材した際に「年齢を重ねていけば、そのうちスタミナがもたなくなってオーバーワークぎみになってきます。そろそろもっと大人の役をやりたいですね」と語っていたソニンだが、今作『大病院占拠』では息もつかせぬ展開の中で、冷静に現場を指揮しなければならないという大役。映像ならでは、表情の細かな変化などていねいな芝居をしているところに注目したい。これも一つの大人の役といえるのではないだろうか。 (写真と文:志和浩司)