豊川悦司「俳優は人間を形作る仕事」プライベートの経験が引き出しになる
豊川悦司(とよかわえつし)。デビューして30年以上が過ぎベテランの域に入ってきた。18歳の頃、大学で演劇部に入ったことがそのまま現在へとつながっているという。ネームバリューのある一流の役者となった今、何を思うのか。芝居との出会いから振り返ってもらい、具体的な役作りの方法、これからの展望までを聞いた。
壁を感じるときは仕事への興味が薄れるとき
「大学に入るといろんなサークルが新入生を勧誘するじゃないですか。それでやったことがなかったですし興味があったので演劇部に入りました。初出演作は演劇部の部長の演出で、脚本も部長のオリジナル。大阪の小劇場で上演し、以来『芝居って面白いな』という感覚が自分の中にあって、そこからコツコツと芝居をやって、ずっと続けていたらいつの間にか今のようになったという感じです」 その当時から役を演じるということにおいてはとくに大きくは変わっていないという。 「俳優としてやることは舞台も映像も一緒だと思っていて、アウトプットの仕方が違うだけではないかと。舞台はダイレクトにその場にお客さんがいますが、映像でもスタッフがいるし観てくださるお客さんがいることに変わりはありません。とくに映像では一番最初の観客はその作品を撮っているカメラマンだといつも思っていて、いかにカメラマンが興味を持ってくれる役作りをするかがテーマの一つです」 キャリアを積み重ねてきた中で、過去、芝居が辛いと感じたこともあったという。 「大きな壁としてはこの仕事に対する興味が薄れて行くことかな……。俳優に限らずどんな仕事でも同じでしょうが、やっぱり人間ですから波があって、夢中になれるときと夢中になれないときがある。理由はさまざまでしょうけど。自分のリズムの中で『何か、ちょっと興味が今薄れているのかな?』というときは辛いですね」 それをどう持ち直すのか。 「僕の場合は、もう強引です。『んんん~!』って感じで強引に気持ちを持って行きます(笑)。だからすごく疲れますね。『いやぁ~今やる気が出ないんで』なんてことは社会人として許されるわけがない。じゃ、どうやってやる気を出すのかと考えたら、強引にやるしかない」 そんな強引さは気持ちを建て直すときばかりではなく、作品を撮っている間にも必要だ。 「たとえば役の解釈をめぐって監督と戦ったりする場合もあるだろうし、それは監督も俳優もフィフティフィフティで。自分が『こうやりたい』と言うと監督が『それなら合わせようか?』というときもありますし、逆にこちらが合わせる場合もある。合わせるときにはやはり強引に気持ちを持って行かないと、けっこうきついケースが多々あります」