日銀・黒田総裁会見10月29日(全文2)2%目標は変える必要なし
特別プログラム延長の議論は始まっている?
産経新聞:産経新聞の大柳です。特別プログラムについてなんですが、先ほどもちょっと質問がございましたが、3月末までということですが、必要であれば期限を延長することの考えに変わりはないということなんですが、相手先もあることなので急に何か発表するっていうものでもないかと思うんですが、先ほどの総裁の話聞いていると、貸し出しも増えているし、資金繰りについても緩和的な状況が維持されているというご発言ありましたが、もう内部ではこういう、いつどうするかというような議論というのは始まっているのでしょうか。 黒田:先ほど申し上げたようにこれまでのところ、非常に金融機関側の努力もありますし、また、政府のさまざまな政策もありますけれども、日本銀行の特別プログラムの下で銀行の貸し出しは順調に伸びております。で、さまざまなヒアリング等からも、企業の多くは年越えの資金繰りはもう十分付いていると。あとは、年度越えの資金繰りがどうかっていうのは来年になって議論になるところかもしれませんが、そういったところですので、今慌てて何かしなくちゃいけないっていうことはないと思いますが、ご指摘のように来年の3月末までの時限措置というのを、間際になってうんぬんするっていうのは良くないと思いますので、当然のことながら、状況を見ながら必要な時期に、延長するということであれば、決定をしていきたいと。 今の時点で具体的にいつからどうするということを内部で議論しているということではありませんが、常にさまざまな企業の資金繰りのデータを部内でよく見ておりますので、そういったものも見ながら、そして企業の状況を単に資金繰りだけでなくて、企業の収益とか、そういうことまで含めてよく見てまいりたいというふうに思っております。
物価の急変時も柔軟に対応できるのか
ニッキン:すいません、ニッキンの【タダ 00:33:17】と申します。足元のちょっと見通しとは逆の局面に関する質問になってしまうんですけれども、政策対応の柔軟性の観点から伺いたいと思います。マイナス金利政策ですか、現行の政策はデフレに対してある意味対応できている、できる、実際していると思う反面、急激なインフレ、テールリスクかもしれないんですけれども、そういった面には若干ガードが甘いような感じも、みる向きもあるんですけれども、新型コロナの物価に対する影響がデフレ的という見方が中心なのかもしれませんけれども、不確実性が高い中で、万が一ですけれども、物価の急変動、特に上向きの動きにも金融市場ですとかに混乱を与えることなく迅速、柔軟に対応できるのかといったところをお伺いできればと思います。 黒田:その点はマイナス金利だから特に金融政策が柔軟に対応できなくなるということはないと思っております。なお、この新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する中で、エコノミストの議論としては、一方でこれは、なんて言うんでしょうか、需要が消費者とか、いわゆる行動の自粛によって、消費需要を中心に需要が減るという面と、通勤とか何かできないとか、その他いろんなことで供給が減るという面と、両面あるわけですね。 ですから、エコノミストの中には供給が減る面のほうが強ければむしろインフレ的かもしれないし、需要が減る面のほうが大きければデフレ的かもしれないという議論は当初はあったんですけども、最近のIMFの分析等を見ても、やはり需要減の影響が当面非常に大きいと。それから供給減といっても、これは地震とか台風とか洪水によって工場設備とか、そういうものが損なわれているわけでは全然ないんですね。工場設備も交通機関もインフラも、全てそのままあるんですね。ただ、感染症対策ということで、行動が抑制されているというだけなので、供給面への影響もそういったコロナウイルスの感染症の影響が薄らいでいけば、それは自然にそうなるのか、あるいはワクチンとか、治療薬が普及することによってそうなるのか、いろいろあると思いますけども、そういうふうになればすぐに供給力は戻るわけですね。