【大学トレンド】「マンガ学部」「マンガ学科」…大学で学ぶ意義は? 気になる卒業後の進路は…
マンガを日本文化として研究対象とする大学が増えています。世界から注目されるポップカルチャーとして日本のマンガの評価が高まり、文化論としての学問研究を深める動きもあります。実技を身につけられる「マンガ学部」「マンガ学科」を設置している大学もあります。大学でマンガを学ぶことには、どのような意義があるのでしょうか。 【写真】昔のイメージとは大違い? 女子高生に人気の意外な大学
マンガに関連した学部を日本で初めて設置したのは、2006年に設置された京都精華大学のマンガ学部です。日本で唯一のマンガ学部で、数多くのマンガ家を育ててきました。マンガ学部には、ストーリーマンガコースと、キャラクターデザインコースの他に、新しい時代に対応した新世代マンガコースもあります。いまのマンガは雑誌で読むだけではなく、スマホやタブレットで読まれていて、縦スクロールのWebtoonスタイルも広がってきています。その変化にともない、マンガ家としてデビューするのは雑誌の新人賞を受賞する形だけではなくなっているため、同コースではSNSで作品をプロデュースして、自分をアピールする方法も学ぶということです。また、同大と京都市が共同して開館した日本初のマンガ博物館には、明治時代の雑誌や戦後の貸本などの貴重な歴史資料から、現代の人気作品など約30万点が所蔵されています。 学部ではなく、専攻コースの一つとしては、大阪芸術大学、京都芸術大学などにも設置されていて、いずれも実作だけではなく、マンガ文化なども学べる点が特徴です。 一方、明治大学国際日本学部や学習院大学大学院人文科学研究科では、マンガやアニメなど日本のポップカルチャーを研究する科目や講座があります。少女マンガからジェンダー論を議論し、アニメの聖地巡礼やオタクの変遷などを語り合いながら、新しい日本文化の学問として論文が書かれています。
視野を広げるために大学へ
東京工芸大学芸術学部のマンガ学科は、2007年に設置された東日本では初のマンガ学科です。「ストーリーマンガ」「キャラクターイラスト・カートゥーン(ひとコママンガ)」「マンガ研究・編集」という、3つの分野の専門技術や知識を身につけることができます。マンガ学科4年の遠藤駿作さんは、イラストレーターになることを目指して、同大学に入学しました。イラストレーターになるための技術は、専門学校などでも学べますが、大学を選んだのはなぜでしょうか。 「中学生のころからイラストレーターになることが夢で、美術系の高校に進学しました。ただ、絵を描くことばかりを続けていると、視野が狭くなり、いい作品を描けないと感じるようになりました。大学では幅広い分野の教育が受けられるので、作品を制作するうえで役に立つのではないかと思いました」 東京工芸大学では、芸術学部の全学科の学生が共通して、芸術学や美術史、経済・経営学などの社会科学、文学などの人文科学、外国語などの授業を受けます。 イラストレーターを目指していた遠藤さんですが、入学早々にマンガを描く面白さに気づいたといいます。 「1年次前期の授業で、16ページのストーリーマンガを描くという課題を出されました。生まれて初めてマンガを描いたので苦労しましたが、自分が作ったキャラクターが動き出すのが面白かったです」 同時に未熟さも実感し、より意欲的に授業に取り組むようになりました。コマ割りやストーリー制作といった基本から、デジタルマンガの表現方法を身につける授業まで、マンガ制作に関するさまざまな授業を受け、技術を磨いていきました。