小林悠が掲げた目標と揺れる胸中「川崎フロンターレで引退するのが一番ですけど…」「若い選手には響かないのかな」【独占取材】
●小林悠の葛藤「プレーできるのもあと何年か、というのもわかっている」
「自分はフォワード特有の動きであるとか、気持ちの部分を伝えられればと思ってきましたけど、一方で強かったときの基準をいまのフロンターレのメンバーでやれるかといえば、多分そうじゃないと思うし、それが正解だとも思わない。サッカーは毎年どんどん変わっているし、優勝したシーズンのサッカーを今シーズンやれば優勝できたかといえばそうじゃない。現代サッカーではポゼッション型のチームは勝てないと言われ、ならば縦に速くとか、いろいろな流れが変わってくる。そのなかでもフロンターレはボールを大事にしていきたいけど、ボールを大事にすれば勝てるのかといえばそういうわけじゃないといった葛藤もあるので」 たとえるならば三歩進めば二歩下がる状態が繰り返された今シーズンで、急成長を遂げた2年目のFW山田新に象徴されるように、未来へつながる選手も台頭してきた。若い頃の自分と山田をダブらせると笑う小林は、濃密すぎる経験を含めて、自身がもっているものをさらに次世代に伝えたいと望んでいる。 「そのためにももっと試合に絡みたいし、もっともっとゴールを決めたい。もちろん受け入れなければいけないところもあるし、あらがっていくしかないと思っているけど、一方でプレーできるのもあと何年か、というのは自分でもわかっている。今シーズンは数多くの選手が引退を発表されたけど、そちらへ引っ張られたくないというか、いろいろ人がやめたからそろそろ自分も、と思うのではなくて、自分がもういいと思ったときにやめたい。それが来年になるのか、再来年になるのかはわからないですけど、そこは自分の体と相談して決めたい」 引退の二文字を口にした37歳の小林へ、さらに質問を重ねた。川崎ひと筋のキャリアになるのか、と。
●「フロンターレで引退するのが一番ですけど…」37歳の小林悠が掲げた目標
「それは何とも言えないですね。もちろんフロンターレで引退するのが一番ですけど、試合に出たいという気持ちもやはり捨てきれない。その意味でも再びチャレンジのシーズンになると思います」 シーズンが始まる前に、自宅の寝室のドアに、その時々に掲げる目標をマジックで記した紙を貼ってきた。いつでも自分の視界に目標が飛び込み、そのたびに自らを奮起させるためだ。今シーズンは「タイトル獲得にかかわるゴールを絶対に決める」と記したが、残念ながら達成できなかった。 「何点を取る、といった目標を掲げるのもだんだん難しくなってきたなかで、あのゴールがなかったら優勝はなかったとか、それこそ決勝でワンチャンスを決めるとか、そういうところで輝けるように練習から準備してきました。その意味では、今シーズンに関してはものすごく悔しい思いしかない」 来シーズンの開幕前にしたためる言葉も、すでに決めていると小林は明かしてくれた。 「来シーズンこそはフロンターレのタイトルに貢献するためのゴールを決めたいし、そういう部分に関して自分は持っている方だと思うので。怪我をせずにほとんどの試合に絡む、という目標もありますけど、自分としては怪我という文字を書きたくないので、シーズンを通して戦う、といった感じでいきたいですね」 通算168ゴールで歴代2位、現役ではトップに立つ38歳のFW興梠慎三(浦和)も今シーズン限りでの現役引退を表明している。興梠に代わって現役選手では1位で臨む来シーズンへ。プロ16年目となる小林には異能のゴールハンターとして、川崎のイズムを伝える伝道師として、まだまだ数多くの仕事が残っている。 (取材・文:藤江直人)
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