貴重な都市の緑への関心喚起した横浜・上郷猿田地区の開発問題
上郷猿田地区の緑地が開発か保全かで長年揺れた底流には、戦後日本の人口爆発、エネルギー革命など大きな社会の変動がある。長年の混迷には、人が自然から分離した生活を送るようになり、緑地との共存のあり方が見えなくなってしまった現実が反映されている。 全面保全を訴えた「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会」の主張のように「宅地開発せずにすべて保全した方が50年後、地権者にとっても地域にとってもいい」という意見も、今、高齢化し、現実に直面している地権者の「生活と地域のことを考えたバランスある最善の案として、次のフェーズに進みたい」という意見も、簡単に善悪で割り切ることはできない。 今、都市に残された緑から学べることは何か―。開発が進められ、緑地は減ってしまうかもしれない。けれども、なくなってしまうわけではない。残される上郷猿田地区の緑は、人が関わらなければ荒れてしまう里山だ。これからも、いつでも多くの人たちの関わりを待っている。 (鈴木ゆりり)