貴重な都市の緑への関心喚起した横浜・上郷猿田地区の開発問題
開発に伴う周辺地域の環境への影響を調査する環境影響評価(環境アセスメント・2007年審査書開示)の機会を捉え、開発による生き物たちの犠牲を最小化するように、地区内の分布を調査し、データ化し、具体的な移植作業等を提案するなど、最善策を練ってきた。 中塚さんは「私は、環境保全ボランティアとして『実効ある保全』をいつも念頭において活動を続けてきました。そのために大切なのは対話だと思っています」と話す。保全をするためには、地権者と対話をしなければ土地にも入れず、調査もできない。事業者に対して「守るべき所は守る」と緊張感を持ちながらも、対話の回路を保つ努力を重ねてきた。その際にSMPが最も大切にしてきたことが、日頃の環境保全活動で「現場をくまなく歩いて調べた『データ』」だ。 SMPは調べたこと・提案したいことを事業者に納得してもらい、事業者が提出する「環境影響評価」と、それに対する審査書や市長意見という実効性ある公文書に、生き物に対する配慮と対応を入れ込むための協議に力を入れてきた。特に希少な小動物の確保やホタルの保全に関しては、綿密なデータを用いて事業者に状況を説明し続けてきたという。
中塚さんの関心は、今回の都市計画で保全地域になることが提案されている東側緑地における維持管理に、どのように市民を巻き込んでいくか、その持続可能な仕組みを構築していくかという点だ。「今、都市のなかで整備された緑地は、自然そのままという所はなく、その多くは市民ボランティアが汗水流して管理してきた場所です。今後この緑地を管理していくには、市民・行政・事業者の連帯が欠かせません。今回の運動をきっかけに瀬上沢のことを知った方々にも、ぜひ実際に足を運び、一緒に汗を流してもらえたら」と話す。
都市の緑地の維持管理
今回の提案は2018年1月15日、「第147回横浜市都市計画審議会」で審議された。審議の中では「どのような緑地保全がベストなのか」という問いを軸に、有識者の間でも意見が割れたが、賛成多数で可決された。 今後都市計画決定(変更)が告示され、この地区で開発が進められることとなった場合、残された緑地をどのように維持管理していくのかが課題となる。中塚さんらは今後の開発に伴う工事や緑地の維持管理にあたり、環境アセスメントを遵守し「実効性」のある開発や維持管理となっているか、引き続き提案していく姿勢だ。緑をどのように守っていくかに関しては、周辺住民を始めとする市民が積極的に緑地の維持管理に関する議論や活動に参加し、緑地と関わり続けていくことが必要になってくる。