貴重な都市の緑への関心喚起した横浜・上郷猿田地区の開発問題
「まちづくりを専門とする企業として、どのような開発が適切か、緑地をどのように保全するのかを考えてきました」と話すのは、上郷開発グループリーダーの須藤秀一さん。長年練ってきた計画は、「次世代に自信をもって伝えることのできる、都市環境と自然的環境とのバランスのとれた姿」、そして「駅を中心とした低炭素型のコンパクトなまちづくり」を目標に掲げる。また、執行役員の今井博史さんは今後の同地区のまちづくりに関して「企業としてきちんとお膳立てする、サポートすることがまちづくりの基本だと思っています」と話し、開発後のまちのあり方を住民と共に考えていく姿勢だ。一方で、全面保全派が提案する市によるみどり税での買い取りについて「地権者の『先祖代々の土地を次世代につなぎたい』という思いは、市が買い取ることで解決できることではない」と話す。 実際「みどり税で土地を購入する」という提案は、どこまで現実的なのだろうか。横浜市都市整備局地域まちづくり課長の石津啓介さんは「みどり税で土地をいきなり買うという仕組みにはなっていません。まず都市計画を決めて、その後段階的に対応していく形になります」と話す。その上で、「その緑地が本当に重要なのかを都市計画審議会で協議する必要があります」という。その緑地を保全することに関して都市計画として説明できること・地権者の同意が得られることが重要になる。地権者の合意形成を図り、新たな都市計画を市に提案する主体とリーダーシップが必要だ。
実効ある緑地保全
全面保全と開発―。2つに「分断」されているようにみえる地域だが、長年具体的な自然保護・整備活動をしていながら、基本的には保全に軸足を置き、今回の署名活動については一定の距離を置いていた人も少なくない。 そのうちの1人が、瀬上周辺のボランティアにより構成されている環境保全団体「瀬上の森パートナーシップ(SMP)」代表の中塚隆雄さんだ。20年以上前から瀬上の森に関わるようになった中塚さんは、「どのようにそこに生きる生き物たち、生態系を具体的に守るか」を考え、行動してきた。