貴重な都市の緑への関心喚起した横浜・上郷猿田地区の開発問題
減り続ける横浜の緑とみどり税
「ホタルのふるさと瀬上沢基金」ほか複数の市民団体や個人からなる「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会」は、「住民投票条例」制定を目的とする署名活動を目標約6万2千筆(市内有権者の50分の1)に定めて行い、12月10日の期日に向け、街頭運動やトーク・ライブイベントを展開してきた。 「緑地をつぶす新たな宅地開発は、人口減少・空き家増加が進み環境問題を抱える現代にそぐわない」というのが、全面保全を訴える反対市民の主な論点だ。
横浜市環境創造局のデータによると、市の緑被率は1975年の45.4パーセントから、2014年には28.8パーセントと、約40年で16.6ポイント減少している。また、気温は100年前に比べて約2.8度上昇しており、南西部に比べて都心部や臨海部等で熱帯夜日数が多くなっている。今後も緑が減り続ければ、さらに温度が上昇することが予想される。 また、この土地はもともと「市街化調整区域」という、基本的には開発が許されないエリアとなっている。しかし、横浜市は今回の計画に合わせ、宅地開発エリアとなる西側を規制が緩やかな「市街化区域」に変更する(線引き変更)方向だ。角田さんらは「今回の線引き変更による開発が許されれば、ほかの地域への前例となってしまうのでは」と危惧する。 代替案として角田さんらは、市が緑の保全・創造のために2009年から導入している「みどり税」(税収規模年間約24億円)で緑地を購入することを提案している。保全活動については「ボランティアでも担うことができる」というのが、全面保全派の考えだ。
「緑を残したい」から、換地に応じた地権者
一方、東急建設は「まとまった質の良い緑を保つためには、ある程度開発して人を呼び込み、経済的に持続する仕組み構築することが必要」と訴える。長年開発が凍結されるなか、地権者の高齢化が進み、亡くなった人もいる一方で、横浜市の人口は2019年にピークとなるが、世帯数はもう少し先の2030年まで増加が続くというデータもある。 今回の計画で保全が予定されている東側に土地を持っていた地権者が、「地域にまとまった緑を残すために」と先祖代々の土地をあきらめ、西側の開発予定地への「換地」を承諾したケースもあるという。 また「どのような街にしていきたいか」という未来について、地権者からなる「上郷開発の早期実現を願う会」が中心になって話し合う定期的なワークショップも開かれている。そのなかでは「緑は今後も大切にしていきたい」「若い人が戻ってくるまちに」という声や「元からの住民と新しい住民とで、一緒に自然を維持していきたい」という声が出されている。