マンガ、WEB、ゲーム…本の可能性をグイグイ広げる講談社。コミカライズコンテスト開催中の元テレビマン社員に裏側を聞いてみた
◆コンテスト開催のモチベーション ーー以前、ベテラン編集者から「出版業は乾物屋だ」と言われたことがありました。「何年もかけて素材を吟味して商品にする。それを店頭に並べたら、いつか来る客のために腕組みして待つのが出版。君のように新鮮な素材を急いで料理して、宣伝して売ろうとするのはサラダ屋で、出版じゃない」って。 出版に限らず、コンテンツを形にする仕事には多かれ少なかれ、そういう側面があったのではないでしょうか。 あらためて自分自身の歩みを振り返っても「自己満足だったんじゃないか」と反省するところはあります。 なるべく多くの人に届けるためには、ちゃんとメッセージを伝えるにはどうしたらいいのか、というところまでちゃんと考えるのが、本来は作る側の責務ですよね。 本にしろ、テレビにしろ、別の形に変えたり、広げたりしながら、消費者へ届けるまでが仕事。そうした想いが、今回の『東洋医学はなぜ効くのか』コミカライズコンテストを開催したモチベーションにもなっています。
◆<広がり>にチャレンジする機運 ーー書籍編集をしていたころ、人気の著者さんへ相談をしにいったら「御社から本を出してどんなメリットがあるの? 今箇条書きで提示して」と言われて。ドキッとした反面、さもありなん、と感じたことが。どこから本を出しても初版部数や印税がさほど変わらず、まして出版を取り巻く環境が厳しくなっていく中でどんなメリットを提示できるのか? その一つが<広がり>なんじゃないかな、と感じています。 若干宣伝っぽくなりますが、それで言えば、私の所属するブルーバックス編集部は編集長を中心にして新しいこと、つまり<広がり>にどんどんチャレンジしたいという機運が強いと思います。 ラジオ局・エフエム東京さんらとコラボレーションして、「ACIDMAN 大木と科学者たち powered by 講談社ブルーバックス」という動画配信に取り組む部員がいたり、YouTube「ブルーバックスチャンネル」を企画・発信する部員がいたりと、新しいことを意欲的に手掛ける流れがあって、すごく居心地が良いです。 かくいう私も、12月からは現在のブルーバックス編集部と、クリエイターズラボというゲームやキャラクターIP、映画などの新しい事業に挑戦する部署と兼務になり、勉強させてもらっています。 先述した『東洋医学はなぜ効くのか』のコミカライズコンテストを開催している「DAYZ NEO(デイズネオ)」もこの部署の皆さんが運営しているもの。 1つの媒体に留まって情報発信をしていると、届く範囲が自然と限定化されてしまいかねません。なので私自身がいろいろなツールやアイデアを吸収することでコンテンツの可能性を広げ、よりたくさんの方にアクセスできたら、と考えています。
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