まさに“時計の王”! カルティエの歴史がわかる3本【腕時計のDNA Vol.15】
定番「タンク マスト」
メゾン初のソーラーウォッチに真価が伝わる メゾンを代表するだけでなく、「タンク」はまさに時計界に輝く金字塔だ。第一次世界大戦直後の1917年に生まれ、その名は、ラグと一体化したケース左右のラインのデザインを、戦車「ルノー FT-17」から着想を得たことに由来する。それはフランスを勝利に導き、平和をもたらした象徴であり、当時のハイテクを印象づけたスタイルは大きな反響を呼び、19年に市販された。 魅力の幅を広げ、数多くのバリエーションが誕生しながらもタイムレスなブランドアイコンとしてあり続ける。それは当初から完成していた秀逸なデザインに加え、根幹には革新性への希求があるからにほかならない。そしてそれは「タンク マスト」のソーラービートモデルへと受け継がれる。 「タンク マスト」は1973年に登場した。当時メゾンとしては画期的なクオーツを採用。その先進性は2021年に光起電発電ムーブメントの搭載し、磨きをかけた。ローマ数字のインデックスから取り込んだ光で発電し、二次電池によって約1カ月間動き続ける。暗所ではスタンバイモードになり、二次電池も交換まで16年間機能する。 現代的な機能を備えながらもケース厚は6.6㎜でクオーツ仕様と変わらない。小振りなサイズもオリジナルを彷彿とさせ、いまのトレンドにも合う。進化を続ける定番というカルティエの真価が味わえるのだ。
通好み「パシャ ドゥ カルティエ」
伝統宿る機能美はアートと呼ぶにふさわしい 「パシャ」の原型は、1943年にラウンドケースではメゾン初の防水時計として開発された。その機能もさることながら、風防はメタルのグリッドで覆い、外部からの衝撃を防ぎ、リューズには脱着式のプロテクターを備えたユニークなスタイルはすでにこの時生まれている。 コレクションとして登場したのは85年。以来、丸い文字盤に四角い秒インデックスを組み合わせ、4つのアラビック数字で囲むフェイスに、バータイプのラグやチェーンでつないだねじ込み式のリューズプロテクターといったシンボリックなスタイルは変わることなく、高く支持されている。 防水時計というスポーティな出自に対し、独自のエレガンスを併せ持つ「パシャ」の新たな魅力がスケルトンダイヤルだ。文字盤はもちろん、ムーブメントの地板や受けも極限まで削り取り、香箱や輪列、脱進機だけが宙に浮かび上がるようなスタイルは、ミステリークロックの伝統を想起させる。そしてシンボルであるアラビック数字や四角の秒インデックスなどをオープンワークで表現し、研ぎ澄まされた機能美が漂う。それはまさにアートピースの領域といっていい。