「夢や目標がなくても楽しい」ピエール瀧とYOU、寄り道が作る「自分らしさ」の足跡
電気グルーヴのメンバーとして音楽活動を続けながら、俳優としての顔も持つピエール瀧。バラエティー番組に数多く出演するかたわら、モデルや女優としても活動するYOU。共にジャンルにとらわれない活躍を見せているが、どちらも「夢や目標は特になかった」という。 「自分らしい生き方」を体現しているように見える2人は、仕事に、家族に、どう向き合ってきたのか。プライベートでも仲の良い、“似たもの同士”の会話に耳を澄ませる。(取材・文:井上マサキ/撮影:栃久保誠/編集:黒木貴啓(ノオト)/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部)
目標なく来た2人 「出港後」に「じゃあやります」の人生
バラエティー番組などで長らく共演を重ねてきた2人だが、最初の出会いを聞いてみると、そろって「いつだっけ……」と仰向いた。YOUは1988年にバンド・FAIRCHILDのボーカルとして、瀧は91年に電気グルーヴのメンバーとしてメジャーデビュー。2組のデビューには「バブル崩壊」という境目があった。 YOU:デビューしたころって、まだバブルだったのね。レコーディングなんか好きなだけできたし、「ロンドン行きた~い!」って言ったら「そっか」って連れてってもらえたりしたの。で、何年かやってたら、バブル崩壊とともにバンドブームが終わっちゃって。 瀧:そうか、電気(グルーヴ)とかスチャ(ダラパー)がデビューしたころって、バンドブームが終わったあとだから。「人生」っていうインディーバンドをやってた時期があって、それが終わって「自分たちが好きな音楽を好きなようにやろう」って始めたのが電気グルーヴなのね。だからデビューへの意気込みはあまりなかった。レコード会社から「プロでやらない?」って誘われて、「じゃ、やっときます?」みたいな感じ。
YOU:そうなんだ。あたしも今までやってきたこと全部、誰かから声をかけていただいてここまで来ちゃったから……。 瀧: YOUはどういう流れからFAIRCHILDでデビューしたの? YOU:高校3年のとき、竹下通りを歩いていたら「モデルやりませんか?」ってスカウトされたの。でも当時はバブルだから、もうそこらじゅう、みんなモデルなのね。「どんぐり投げたらモデルに当たる」って言われたくらい。 瀧:まだ「読モ」みたいなのがない時代だから、声かけられて出たらもう「モデル」なんだ。 YOU:それでモデルの仕事を続けてたら、事務所の方針で急にラジカル(※)に入れられたの。20歳の素人の女の子がいきなりサブカルの真ん中に放り込まれたから、もうカルチャーショックで。 ※ラジカル・ガジベリビンバ・システム:宮沢章夫、中村ゆうじ、いとうせいこう、シティボーイズ(大竹まこと、きたろう、斉木しげる)らによる演劇ユニット。 瀧:それはさ、FAIRCHILDをやる前でしょ? ということはモデル&女優スタートじゃんか。 YOU:あれは女優って言わないな……。ホントに素人。ただの素人が「行け!」って言われて行っちゃっただけ。こういう「知らないところに放り込まれる」ってパターンが多くて、「ごっつ」(『ダウンタウンのごっつええ感じ』、フジテレビ系)もそうだったし。変な修業の仕方してるんだよね。