「夢や目標がなくても楽しい」ピエール瀧とYOU、寄り道が作る「自分らしさ」の足跡
瀧:とりあえず船に乗せられて出港したあとで、「なにここ!?」みたいな。 YOU:でも「そうなんですね。じゃあやります」って、意外とそこでやろうとするの。FAIRCHILDも、ラジカルに出てるのを見たバンマスから「バンドやりたいからボーカルやらない?」って誘われて、「え~? ボーカル~?」って言いつつ、やる、みたいな。 瀧:「バンドで売れよう」みたいな目標って、当時あった? YOU:あたしはなかった。周りは「武道館やってこそ一人前」みたいな感じだったけど、そういうとこ目標にやってたわけじゃないもん。瀧もそうでしょ? 瀧:うん。ラジオや雑誌で認知はされていたけれど、「売れる」ことは目標じゃなくて。自分たちがやりたいことを形にしたい気持ちが、先にあったと思うな。
「また呼んでもらう」とは思わない。求められるものに全力で応えるだけ
2人の活動は音楽だけにとどまらない。タレント活動はもちろん、ドラマや映画では役者として独特の存在感を示してきた。しかしお互いプロの役者ではないため、「呼んだのはそっちだから」と肩に力を入れ込まない。飄々(ひょうひょう)としたスタイルの裏には、請けた仕事に真摯に向き合う「プロ」としての信条があった。 YOU:瀧はさ、最初に役者をやったのはなんだったの? 覚えてる? 瀧:Vシネの作品で、レンガで頭をたたき割られて死ぬ役(笑)。というか実はね、もともと映像制作会社でバイトしてたことがあるの。電気グルーヴ結成前に、1年くらい。 YOU:ほぉ~! 初耳! 瀧:21歳のときかな。「人生」が終わったあと映像の仕事がしたいなと思って、四谷三丁目の制作会社を紹介してもらったのね。小さい会社だから、現場の準備とか、機材車の運転とか、お弁当買いに行くのとかも全部やってた。 YOU:そうなんだ~!
瀧:そのバイトは電気でメジャーデビューしたときに辞めたんだけど、何年か経って役者の仕事に呼ばれたら「懐かしいな、現場のこの感じ」ってなるわけ。どんな準備をしているかわかるし、予算によって現場の規模も違う。それが面白くて。だから「役者」という役割をもらいつつ、半分現場見たさに行っていた感じなんだよね。 YOU:「電気グルーヴ」っていうホームがあるから、他のところにも行きやすかったんじゃない? 瀧:最初のうちは言い訳にしていた部分もあったかな。「だって俺、電気グルーヴですから。できなくてもしょうがないでしょ」みたいな。でも呼ばれるうちに、「こんな感じかな」と考えたりするのが、だんだん面白くなっていった。 YOU:あたしも「呼んだのはそっちだからね」っていつも思ってるけど……。 瀧:おんなじ(笑)。 YOU:でも、できることは一生懸命やる。プロの役者さんじゃないけども、自分にやれることはちゃんとやりたいじゃない? 瀧:本当にね。最初はさ、人前で演技をするのって、抵抗なかった? YOU:っていうか、あたしは演技をしてないもん。できてないし、してない。 瀧:天才女優さんの発言じゃないですか。 YOU:やめろ!(笑)。昔はね、「あの女優さんだったらどうするのかな」って考えてたの。若いころはイケている女の人の役とか、ちょっとぶっ飛んだ役とかをもらっていたから、考えないと全然わからなくて。でも最近、役が自分に近づいてきて、すごく楽になった。