「溶岩流」果たしてどこまで到達するのか…「富士山が噴火した」ときの「衝撃的な被害規模」
富士山溶岩の特徴
富士山は粘り気の少ない玄武岩質のマグマからできた火山である。富士山から流れ出す溶岩は、粘性が小さくサラサラしている。その代表例が1万1000年前に噴出した三島溶岩で、山の南東側の中腹から流出して現在の三島駅を越え、海岸近くまで達した長大な溶岩流である。 その長さは30キロメートル、幅は数百メートルにも及び、ハワイの溶岩流のように薄く広がる溶岩が何十枚も積み重なっている。三島市には1メートルくらいの厚さの溶岩が現在も残っていて、三島駅北口を出て左のバスターミナルで、その断面の一部を見ることができる。日本で見られる溶岩流としては最大級のものである。 富士山の溶岩は、長く流れるだけでなく、その量が多いことでも知られている。北麓の富士五湖にある青木ヶ原溶岩は、大量の溶岩が流れ出た代表例である。青木ヶ原樹海に覆われていることでも有名だ。青木ヶ原溶岩は平安時代中期の貞観年間、864~866年に噴出した。一連の噴火活動は、富士山の「貞観噴火」と呼ばれている。 大量の溶岩が出た結果、もともとあった剗海という大きな湖が分断され、現在の西湖と精進湖ができたと考えられている。
溶岩流ハザードマップ作成のプロセス
さて、以前の記事〈いま「富士山」が噴火したら…その「ヤバすぎる威力」と「凄まじい影響範囲」〉で、ハザードマップを紹介した。じつは、富士山のハザードマップでは、溶岩の流れ方も予測されている。 溶岩のハザードマップは、まずマップ上に火口の位置を書き込み、その火口から溶岩が流れ出すとどうなるかをコンピューターでシミュレーションし、その情報をマップ上に反映させることで作成する。 また、溶岩の流れを予測する際には、これら噴出総量とともに「噴出流量」が重要である。つまり、「ある時間にどれくらいの溶岩が流れるか」の割合である。 噴出流量は、それぞれの噴火でかなりばらつきがある。最終的にどれだけ流れたかを表す噴出総量の大きいほうが噴出流量も大きくなると考えがちだが、実はそうではない。むしろ、噴出流量の小さな噴火ほど長期化して、結果として大量の溶岩を流出する。