イラストレーター三好愛さん初絵本「ゆめがきました」インタビュー「眠るのが苦手な子も、夢を楽しみながら眠りについて」
眠るのが苦手な子の「おやすみ絵本」に
――「かぜにのって とんでいく ゆめ ごうごう ふわふわ ぴょうぴょうぴょう」のように、声に出すと楽しくなるオノマトペがたくさん出てくるのも絵本ならではの醍醐味です。 ちょうど子どもが2歳のときに文章の仕上げを考えていたので、やっぱり親の自分が読み聞かせて楽しい音がいいな、という気持ちがありました。 風の吹く音として「ぴゅうぴゅうぴゅう」だと普通すぎるから「ぴょうぴょうぴょう」かな、といった感じで、口ずさんで楽しくなるような擬音語を選んだつもりです。 ――夜空でゼリーを食べたり、猫と温泉に行ったり、玉になって転がされたり……次のページではどんな「ゆめ」が待っているんだろう? と大人もワクワクしてきますね。 また子どもの話になってしまいますが、うちの子は夜になってもまったく寝ないタイプで、「寝かしつけってこんなに大変なんだ!」と子育てを通して私も初めて知ったんです。 だからこそ、夜でも元気でなかなか眠りにつけない子どもたちに向けて、「眠ると楽しい夢が待っているからね~」と説得したいような気持ちも込めて描いています。 絵本の中にはいろんな子どもが出てきますが、お母さんたちが安心できるように、どの子も寝顔や寝相はめっちゃかわいく描いたつもりです。この絵本を読んだ子どもたちが、夢を楽しみにしながら眠りについてくれたら嬉しいですね。 ――顔のあたりに黒丸の目が2つ並ぶ「生きもの」たち。デビュー以来ずっと三好さんの作風を象徴するこの不思議な生きものたちが『ゆめがきました』では大勢登場します。一貫してこの「生きもの」たちを描き続けているのはなぜでしょうか。 昔から具体的なものを描くのがあまり得意ではなかったことが理由のひとつです。イラストレーターになったばかりの頃は、コンペも落ちまくりで、「絵が抽象的すぎる」と言われて仕事もなかなかもらえませんでした。 でも逆に、その曖昧で抽象的なところが、人間の感情のような曖昧なものに関する小説や人文書の装画とは相性がよかったみたいで。形に起こせない曖昧な感情を、曖昧なまま描くということをずっと続けてきたら、必要としてもらえるようになった気がします。 それに表情が単純だと、見ている人がいろんな感情を想像しやすくなるかなとは思うんですよね。描き手が感情を決めきらないほうが、広がっていけるのではという意図があります。 私の場合は具体的なものが描けない開き直りから、すべてのものを曖昧に描くようになりました。それが応用力としていい感じに身についたのかもしれません。