スギ花粉が大量に飛散する年は経済が悪化!? 意外と知らない花粉症の現在地
1~3月期家計消費と前年7-9月期気温の関係
第一生命経済研究所首席エコノミスト・長濱利廣氏のレポート。過去の気象と内閣府データから1~3月の家計消費と前年の7~9月の気温差の関係を割り出したもの。前年より気温が高い年ほど消費率は低くなる。
岸田首相「花粉症対策は社会問題、3本柱で結果出す」
毎年春には一般消費が減り、生産性はだだ下がり。これはまさしく国家の危機。というわけで、2023年4月の国会で岸田首相が花粉症対策について言及した。要旨は「もはや日本の社会問題」「関係閣僚会議を開催し、情報共有や効果的な対策の組み合わせに取り組んでいる」「ぜひ結果を出したい」。効果的な対策の組み合わせとは、冒頭に示したような「3本柱」。その内訳は次の通り。 ・発症等対策…対症療法、免疫療法などの推奨。 ・発生源対策…2033年までにスギ人工林の減少と伐採、植え替えの加速を推進。 ・飛散対策…民間事業者が行うスギ花粉飛散量の予測精度向上を支援。 ひとつは発症対策で、診療ガイドラインの整備、免疫療法などの周知、治療薬の増産など。ふたつ目は発生源対策。日本の花粉症の多くはスギによるものなので、伐採したり花粉の少ないスギに植え替えるなどして10年後にはスギの人工林を今より約2割減らし、30年後には半減させることを目標に掲げた。3つ目の飛散対策としては、民間事業者が行っているスギの飛散予測の精度をアップデートさせること。 いずれも環境省、国土交通省、厚生労働省、気象庁、林野庁といった多くの省庁が横断的に関わることになる。うまく交通整理を行って結果を出してほしいもの。
2020年からスギ花粉症薬《オマリズマブ》が解禁
2020年に重症のスギ花粉症治療薬として世界で初めて《オマリズマブ》という薬が保険適用となった。毎年春に花粉症に悩まされてきたニッポン人にとって、これは朗報。とはいえ、この薬自体は古くから存在していたものだという。 「90年代にアメリカの製薬会社が作った薬で、世界中で臨床試験が行われ、重症の気管支炎や蕁麻疹など命に関わる病気には保険適用になっていました。ただ花粉症に関してはどこの国でも認められていなかったのが、3年前に日本で初めて認められたということです」 オマリズマブは花粉が体内に入って作られる抗体の働きの邪魔をしてアレルギー反応を抑える。投与は注射によるもので、花粉の飛散開始後から数週間に一回の頻度で数回注射を打つ。ただし、1回の注射につき1万円以上と高額な薬品なので重症者のみの適用。花粉症デビューしたてという人が予防的には使えないというのが現状だ。
取材・文/石飛カノ(初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売)