【ABC特集】さよなら”不夜城”「味園ビル」 裏なんばを照らす妖艶なネオン 昭和の香り残す2階バーエリア約40店「最後の冬」に密着 噂飛び交う”ビルの今後”は?
大阪の繁華街「ミナミ」。道頓堀川やグリコの巨大看板などを中心に、古くから続く”商人の街”の雰囲気が色濃く残るエリアです。 【ミナミの不夜城】さよなら「味園ビル」 昭和の香り残すバーエリア「最後の冬」に密着 そのミナミの少し外れ、通称「裏なんば」と呼ばれるエリアに、69年間異彩を放ち続ける建物があります。
「契約は年内いっぱい」 味園ビルで営業 約40の個性派飲食店にお別れの時
インバウンド客で賑わうミナミのターミナル駅、南海なんば駅を降り東に5分ほど歩くと、見えてくる建物が「味園ビル」(みそのビル)です。パッと見ただけでは、街全体が作り出す雑多な雰囲気に溶け込み、初見の人は通り過ぎてしまうかもしれません。しかし、建物の入り口が「噴水とらせん階段」だったり、屋上にはネオン管で作られた大きな「味園」の文字が輝いていたり(残念ながら今はネオン管は点灯せず、ライトアップのみされている)。異彩さ、妖艶さを醸し出す味園ビルの外観は唯一無二です。 69年前の1955年に竣工した味園ビルは、地下の貸しホール「ユニバース」のほか、宴会場やホテル、サウナまで備える、まさに娯楽の殿堂です。 宴会場・ホテル・サウナは数年前に閉鎖されましたが、今でも味園ビルの魅力として人々を惹きつけるのが、2階のバーエリアです。 らせん階段を上ると広がる、約40軒の個性あふれる飲食店。 しかし今年5月、各飲食店の賃借人に対し「今年いっぱいで契約は終了」という手紙が届きました。 裏なんばの象徴として愛された味園ビル。そこに入居する店を取材しました。
「内装には金をかけるな」 19年前から”察していた”味園ビルの最後
バーエリアに入って20mほど進んだ先にあるのが、「深夜喫茶・銭ゲバ」。 19年前、マスターのムヤニーさんが脱サラして始めた銭ゲバは、カウンター4席といくつかのソファー席からなる、こじんまりとしたお店です。 中には、常連客が持ち込んだ、かなり個性的な小物やポスターが所狭しと。 「上のホテルも5年前に閉まっちゃったし、宴会場もコロナで閉まって。そのうち終わりなのかみたいなのは、お店をやっていた人たちは察していた感じですけどね」。 契約終了の手紙は5月、銭ゲバにも届きました。しかし、ビル自体から醸し出る”隠しきれない古さ”は、店を始めた19年前からあったため、周りからは「いつつぶれるか分からないので、内装に金をかけるな」と言われていたんだそう。 手紙が届いてすぐ、ビルから歩いてすぐの所に移転先も見つけ、銭ゲバは何ヶ月も2重家賃の状態です。マスターのムヤニーさんは当初、夏の終わり頃には新店舗に引っ越す予定でしたが、”味園ビルの最後”を惜しむ客が全国から訪れるため、今月末まで味園ビルで営業することを決めました。