【遺族厚生年金】5年間で給付打ち切り、中高齢寡婦加算も廃止検討で改悪か?改正ポイントをわかりやすく解説
中高齢寡婦加算も廃止が検討される
中高齢寡婦加算は、夫が亡くなったときに妻が40~65歳の場合に、遺族厚生年金に上乗せされる年金です。これは妻にのみ加算される制度で、妻を亡くした夫が40~65歳であっても加算されません。制度が公平性に欠けることから、中高齢寡婦加算については廃止が検討されています。 遺族年金の制定時は、夫が働き妻が家庭に入るといった世帯が一般的でした。そのため、妻が亡くなっても夫自身が働いて収入を得られれば、生活に困ることはありません。 しかし、時代は変わり、共働き世帯や男性が家庭に入る世帯が増えてきました。「女性の就業環境が整ってきたにもかかわらず、中高齢寡婦加算は女性限定」「寡夫への加算はない」といった制度の課題が目立つようになってきたのです。 とはいえ、急な制度廃止は激変的な措置となるため、政府は段階的な廃止を検討しています。すでに中高齢寡婦加算を受給している人たちの取り扱いなども含め、十分な時間をかけた経過措置が必要となるでしょう。
【遺族厚生年金の改正案】改正後はどうなるのか
遺族厚生年金の改正後のイメージは、以下のような形を想定しています。 ・20歳代から50歳代に死別した子のない配偶者へは、夫・妻のどちらが亡くなった場合でも5年間の有期給付をする。 ・妻の給付については、時間をかけて段階的に5年間の有期給付とする。 ・18歳未満の子どもがいる場合は、現行どおり子どもが18歳になった年度の末まで受給できる。 ・高齢期の配偶者に給付する遺族厚生年金は、現行どおり終身で受給できる。 遺族厚生年金の改正で大きな変更点となるのは、夫・妻どちらが亡くなっても5年の有期給付が受けられるようになることです。男女差がなくなることで、専業主夫の人や妻が会社員、自身が自営業という人でも、遺族厚生年金を受給できます。 また、妻への終身給付は時間をかけて段階的に5年間の有期給付へ移行する見込みです。ただし、これまで終身給付を受けられていた人の受給額が減ってしまうのを考慮し、有期給付についても見直す予定です。厚生労働省は、見直しの方向性を以下のように掲げています。 ・現行制度の離婚分割を参考に、死亡者との婚姻期間中の厚年期間に係る標準報酬等を分割する死亡時分割(仮称)の創設を検討し、分割を受けた者の将来の老齢厚生年金額の増加を見込む。 ・現行制度における生計維持要件のうち収入要件の廃止を検討し、有期給付の遺族厚生年金の受給対象者を拡大する。 ・現行制度の遺族厚生年金額(厚生年金の報酬比例部分×4分の3)よりも金額を充実させるための有期給付加算(仮称)の創設を検討し、配偶者と死別直後の生活再建を支援する。 現行制度よりも多くの金額が受給できるよう、見直しを進めるようです。こうした措置を講じることで、配偶者と死別したあとの生活再建を支援し、高齢期の生活保障への対応も進めていきます。