発達障害を映画で描くなら「感動」か? 「リアリティー」か? 社会的理解を深めるために重視すべきは?
アナウンサー赤平大「発達障害と子育てを考える」
発達障害支援を巡る社会の課題を、元テレビ東京アナウンサーで現在はフリーの赤平大(あかひらまさる)さんがつづります。発達障害とギフテッド(高IQ)を併せ持ちつつ、名門私立の麻布中(東京都港区)に通う息子の父親として、専門家の意見や研究の知見などを紹介しながら当事者目線で考えます。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい
発達障害をサポートするうえで大切なことは「終わりのない知識と情報のアップデート」です。 私は、発達障害の息子の人生を安心・安全なものにしたいと思い、大量に論文を読み、有識者に話を聞き、民間資格を取得し、息子の成長速度に間に合わせるため、全力で独学で勉強してきました。 加えて、すべての生活を息子中心に切り替えました。本業であるアナウンサーの仕事は、息子の登下校や習い事、通院に重ならないようにしました。その結果、プライベートの時間はなくなり、友人との会食は年に5回もありません。 同時に、社会における発達障害やニューロダイバーシティ(脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で生かしていこうという考え方)の知見や認知を高めるために、アナウンサー業と並行して起業し、発達障害動画メディア「インクルボックス」を開始しました。「寝てない自慢」をするつもりはないのですが、平均睡眠時間は約3時間、でも息子と一緒にいる時間が多いので、とても幸せです。息子からはいつも「もっと寝て! もっと食べて!」と優しく声をかけてもらっています。 この息子の将来に向けた安心・安全のための日々の取り組みが、結果、思惑からは完全に想定外だった麻布中学合格という形となり、多くのメディアに取り上げていただきました。 では、麻布中学校に進学した息子は、何の心配もなく安心・安全な人生になったのか? 私は、発達障害の支援をしなくなったのか? ゆっくり寝て、友人と飲み歩いているのか? そんなことはありません。どこのご家庭も同様ですが、子どもの成長に沿って課題は変わります。発達障害支援も変わります。よって以前と変わらず、「終わりのない知識と情報のアップデート」を続けています。 このコラムでは、これまでの日常で感じた発達障害の社会問題を「発達障害の息子を持つ父親」「四半世紀テレビで働くメディア人」「発達障害の社会認知を広めたい起業家」の三つの視点をベースに書いていこうと思います。