発達障害を映画で描くなら「感動」か? 「リアリティー」か? 社会的理解を深めるために重視すべきは?
「99%、いつも曇り」はリアリティー重視の作品
では反対に「感動」量を減らし、リアリティー重視の作品にするとどうなるか? ご本人が発達障害グレーゾーンの女優・映画監督である瑚海みどりさんの作品「99%、いつも曇り」は、当事者が主演・監督ということもあり、極めてリアルで秀逸な作品です。私は「あぁ、発達障害を分かっている映画だ」と感じる一方で、「発達障害を知らない人には、どんな作品に見えるのだろう?」と感じました。 発達障害を深く知ってしまった私は「発達障害を知らない」視点を失っており、リアリティー重視が障害に無関心な視聴者を振り向かせるエネルギーがあるかどうか、正直わかりません。 障害への社会的理解を深めるという視点で考えると、「感動ポルノ」によって障害に無関心な人を振り向かせ結果的に「関心」→「理解」につながることは、2006年に国連総会で採択された障害者権利条約で重視される「障害の社会モデル」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/udsuisin/pdf/kyo02.pdf)にかなった考え方です。 2時間という制約がある映像作品を作る上で「感動」を振り掛ける判断の難しさは、メディアに長年いる私も気持ちが重々わかるだけに、西川監督、瑚海監督の生みの苦しみは大変だったのだろうと思います。 そんな中で、 ② 高校生の史織の朝食である「素うどん」を毎朝作るなど、父親(吉田栄作)は「過保護」なのか? この点に関して、発達障害の父親である私は、吉田栄作さんの演技に多くの感情が湧き、最も熱く西川監督と意見交換しました。 こちらは次回のコラムでお話しさせていただきます。
赤平 大(あかひら・まさる)
元テレビ東京アナウンサー。現在はフリーアナとしてWOWOW「エキサイトマッチ」「ラグビーシックスネーションズ」、ジェイ・スポーツ「フィギュアスケート」、NTTドコモLemino BOXING「井上尚弥世界戦」など実況、各種番組ナレーターを担当。 2015年から千代田区立麹町中学校でアドバイザーとして学校改革をサポート。2022年から横浜創英中学・高等学校講師。2024年から代々木アニメーション学院講師。発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を持つ。早稲田大学ビジネススクール(MBA)2017年卒優秀修了生。 発達障害と高IQの息子の子育てをきっかけに発達障害動画メディア「インクルボックス」運営。