脳卒中の治療までの時間が60分短縮 地方医師が頼りにする救命アプリと医療DX
「マイナンバーカード経由で個人の医療情報を医療機関が把握できる時代になれば、電子カルテの情報共有さえも要らなくなるかもしれません。課題だらけの地方の救急救命に携わる者からすれば、早くそういう便利な体制になってほしいというのが本音。一分一秒を争う現場では、救命に役立つ道具を常に探しています」 Joinは世界でも普及が進み、今では32カ国、約1200施設で使われている。日本でも利用者が広がっているが、保険が適用されるのは脳卒中に限られている。開発者である東京慈恵会医科大学の髙尾さんは、「脳卒中の診療以外にも適用が広がるといい」ともどかしげだ。 「アプリで医療の迅速さが増せば、救命につながる可能性は増すし、オンラインで医師同士が相談できれば医療全体の効率がよくなると思う。日本には30万人を超す医師がいるのですから、活用しない手はないですよ」 去る10月12日、第1回医療DX推進本部で、岸田文雄首相は「(医療DXは)我が国の医療の将来を大きく切り拓いていくもの」とし、「実現に全力を挙げていく考えです」と述べた。そんな一歩がアプリでも始まっている。
ーーー 古川雅子(ふるかわ・まさこ) ノンフィクションライター。栃木県出身。上智大学文学部卒業。「いのち」に向き合う人々をテーマとし、病や障がいを抱える当事者、医療・介護の従事者、科学と社会の接点で活躍するイノベーターたちの姿を追う。著書に『「気づき」のがん患者学』(NHK出版新書)など。