脳卒中の治療までの時間が60分短縮 地方医師が頼りにする救命アプリと医療DX
そんな医師少数県の一つが青森だ。弘前大学医学部附属病院高度救命救急センターの花田裕之センター長は、救急現場の一枚の写真が判断に役立つと語る。 「たとえば、外の景色、患者の外傷を撮った写真は、事故状況を能弁に物語ります。救急車の心電図や生体情報なども同じ。モニターの画面をパシャッと撮って病院に送れば、一発で容体を把握できる。一分一秒を争う救急の現場は、手軽であることこそが大事なんです」 花田さん自身、こうした「画像の威力」を感じる出来事をたびたび経験してきた。 4年ほど前の秋、センターで待機していた折、「車ごと川に転落した人を救助した」と救急から無線電話で一報を受けた。同時に現場の川の写真が送られてきた。確認してみると、川といっても渓谷や大きな川ではなく、小川と言えるような場所だった。これを確認したことが、迅速な治療対応につながったという。 「写真を見て、川は浅く、車も高い場所からダイブしていないことがわかりました。車体もあまり壊れていなかった。現場の状況を素早く把握するには、言葉で長く語るよりも、写真画像のほうが情報量は多いのです」
24時間体制の救急病院が激減
青森では医師不足にともない、地域の医療機関同士の連携が進んでいる。弘前市では2022年2月から、市内の病院間での転院をスムーズにするため、救急隊と4病院でJoinを導入した。 弘前市で導入が早かった背景には、病院の減少という厳しい現状がある。この十数年で病院の合併や救急からの離脱が相次ぎ、24時間体制で救急患者の受け入れをする救急病院が10施設から2施設へと激減したと花田さんは言う。 「私がいる弘前大学附属病院が、この地域では高度な医療を提供する救急病院となっています。ただ、周囲から救急病院が減ったことで、本来は中堅病院で引き受ける程度の患者までカバーしている。そのせいで病院の高次な医療の負担も増しているんです」 であれば、とにかく患者を大学病院へ搬送するのではなく、現場での症状をできるだけ正確に把握し、その後の治療を地域に分散したほうが大学病院の負担が軽減できる。そんな医療資源の最適化にもJoinが寄与する可能性がある。 ただ、花田さんはJoinを使いつつも、これが最善だと考えているわけでもない。「現状、すぐに使えるハサミ」という位置づけであり、あくまでも過渡的なツールと考えている。