『私の実家が売れません!』築75年・再建築不可”ボロ戸建て”を50万円で売却、実家じまい体験談 小説家・高殿円
遺品整理で頭を悩ませる実家の仏壇問題
うまくいった遺品整理ですが、高殿さんを最も悩ませたのが仏壇です。仏壇は亡くなった人の魂が込められているもの。そのため、処分するには魂を抜く作業が必要です。しかし、仏壇の魂抜きを業者に依頼したところ、10~20万円の費用がかかることがわかりました。 「どうしたらいいか悩んで、日ごろからお世話になっているお寺へ相談に行くことにしました。昨今はお寺離れが進んでいますけど、うちは割と檀家をちゃんとしているタイプなんです。そうしたら、『弔い上げが終わっているから、粗大ごみとしてそのまま処理しても問題ない』とお墨付きをもらえたんです」 そこで仏壇はほかの粗大ごみと一緒に、せどり業者へ処分を依頼。すると昔の仏壇は、金箔や高価な金具などキラキラした装飾がされているため、海外でインテリアとして人気があるのだと教わりました。 「仏壇のほかに処分が大変だったのは、祖母の婚礼タンスです。家に運び入れる時に、クレーンで2階の窓から運び込んだ品物で、かなりの大きさがありました。素人で取り出すのは無理だったので、いとこにチェーンソーで解体してもらってから処理しました」
厳しい物件でも諦めないで 不動産は誰か1人の需要に刺されば売れる
遺品の処分も終わり、残すは再建築不可物件だけになりました。リノベーションして賃貸に出す方法もありましたが、高殿さんは買い手を探すことに決めました。 「ビジネスの基本は、買い手を探してから商売を始めること。だからまずはボロ家に価値を見出す人を考えました。私はDIYが好きでYouTubeもよく観るので、ボロ戸建て投資をしているDIY系YouTuberはどうかなと思ったんです」 ボロ戸建て投資とは、安い価格で売り出されている古民家などを購入し、DIYなどを施して魅力的な賃貸物件にして家賃を得る方法です。 高殿さんは西日本を中心に活躍する古民家DIY系YouTuberや、ボロ戸建て投資を目指す人たちへXやInstagramからメール営業を開始しました。しかし、残念ながら購入希望の声は挙がらなかったと言います。 「メール営業をかけるうちに、築古で再建築不可という厳しい条件だけれど、売れる気がしてきたんです。『不動産って、人気物件である必要はないんです。たった1人でも購入希望者がいれば売却できるんだから』と考えられるようになりました。商品を生産して大量に売るのとは、性質が異なるんですよね。だからこそ、所有物件をマニアックな人に見つけてもらうためにはどうすればいいかを考えるようになりました」 築年数の古い物件がどのように売られているか検索した高殿さんは、考えに考え抜いてインターネットで「実家、50万円で売ります」と告知することに決めました。すると、たちまちいろんな人から連絡が来るようになったと語ります。 「50万円、という価格は直感で決めました。昨今は無料でなんでも享受できる時代ですから、最初に効果を出すためには価格をグッと下げることが必要だと感じて。もしたくさんの購入希望者が出れば、オークション形式で価格を上げることもできますから」 さまざまな理由で購入を希望する人が現れましたが、50万円で即決購入を希望した経営者への売却を決意。その人はクルーザーを所有しており、海に近いセカンドハウスを探していたと言います。 こうして、高殿さんの「父の実家を売る」実家じまいは、幕を閉じました。
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