『私の実家が売れません!』築75年・再建築不可”ボロ戸建て”を50万円で売却、実家じまい体験談 小説家・高殿円
知らない間に家の前の公道が「私有地」になり、再建築不可物件になっていた!?
しかし高殿さんがホッと胸を撫でおろしたのもつかの間、司法書士が取り寄せた登記簿謄本(過去の土地の持ち主などが記載されている書類)で売却の話は白紙に戻ります。 「登記簿謄本で、祖父の家の前面道路が隣に住む親族の私有地だとわかったんです。接道義務(※)を果たしていない土地は再建築不可。買い手は、購入を諦めました」 ※建築基準法第42条で定義される道路(原則として幅員4メートル以上のものをいう)に対し、土地が間口2メートル以上で接していなければ建築物は建てられない 一見すると、祖父の家の前面道路は一般の人も通行できる普通の道路に見えます。しかし登記簿謄本によると、隣人の私有地。ある時、市が道路の拡張工事をするために、隣人の道路側の私有地(歩道)と、祖父の家の前面道路の土地を交換していたことがわかったのです。私有地となった祖父の家の前面道路は、住民が困らないよう私道通行権の許可が提出されていたため、一見、何も問題ないように見えていたのでした。 「こういうケースは意外とあるらしいですね。登記簿謄本を確認すると、住民の知らない条件が出てくるんです。例えば、昔お地蔵さんの管理をしていた方は、自宅のほかに2件隣のお地蔵さんの土地も所有していたケースがありました。売却予定の家がある方は、法務局で登記簿の確認をしておくといいでしょうね」 再建築不可物件とわかったとたん、売却の話は暗礁に乗り上げます。 「知り合いの不動産仲介業者にも相談したのですが、『今の状態では売却は難しい。もう少し様子を見て』と言われました。でも、物件のことが頭の片隅にずっとあるのってストレスじゃないですか。その難題をクリアすることで人生にプラスになるのであれば、頑張ってみようと思ったんです」
賃貸に出すにも売却するにもまずは片付けから 大量の残存物を低コストで処理するには?
まずはゴミ屋敷のような状態の家を片付けようと決めた高殿さん。遺品を一括で請け負う業者に見積もりを取りましたが、40~50万円の費用がかかると言われて悩みます。 「再建築不可物件で売れるかどうかもわからないボロ家ですから、そこまでお金をかけられなかったんです。かといって、フリマアプリで家の中の物品をちまちまと売るのも面倒。だから、アメリカでよく行われるエステートセールを真似て、遺品をすべて無料で持って行ってもらうことに決めました」 エステートセールとは、亡くなった人の遺品を販売する方法のこと。ガレッジセールとも似ています。 高殿さんは無料のエステートセールを、家の中にある品々を撮影した写真と共にインターネットで告知。すると近隣に住む人だけでなく、せどり業者からも反応があり、みるみるうちに家の中が片付いたと言います。 「周りには高齢者しか住んでいないような地域なので、どれくらいの人が来るかは賭けでした。けれど本格的な大工道具や昭和レトロな家具・皿が意外と人気で、どんどん持って行ってくれたんです」 中には、観葉植物の古い土まで持って帰る人がいたそうです。エステートセールが終わって残ったのは、処理費用がかかる洗濯機などの古い家電、ベッドのフレームやスプリングなど。それらは粗大ごみや産業廃棄物として、エステートセールに来ていたせどり業者に9万円払って処分を依頼しました。
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