なぜ8度目防衛に成功したWBC王者の寺地拳四朗は恒例のWピースサインを封印して号泣したのか?
プロボクシングのWBC世界ライトフライ級タイトルマッチが24日、大阪のエディオンアリーナ大阪で行われ王者の寺地拳四朗(29、BMB)が3-0の大差判定で同級1位の久田哲也(36、ハラダ)を下して8度目の防衛に成功した。寺地は2回に右ストレートでダウンを奪うなど終始左ジャブを軸に自分の距離でペースを握り完勝した。昨年泥酔して他人の車を破損させるという不祥事を起こし3か月のライセンス停止&300万円の制裁金などの処分を受けた。自らがまいた種と言えど「不安だった」という寺地はリングで号泣。また敗れた久田は試合後に引退を表明した。
「負けたら人生が終わる」
こみ上げてきた。 判定勝利を告げられて小さく左手でガッツポーズを作った拳四朗はインタビューに応じるためマイクを持った途端に様子が変わった。表情が崩れ、むせぶようにして泣く。加藤トレーナーにもらったタオルで涙を拭きながら懸命に言葉を発したが、ああ、ああと、嗚咽が混じり、そのか細い声は場内のスピーカーでは鮮明に拾うことができなかった。 「自信はあったけど不安もあった。変わらずに支えてくれる方がたくさんいて僕は恵まれている。ボクシングを続けられてうれしい」 両手でWピースが拳四朗のトレードマークだったが、それも封印。「リング上で勝って”帰ってきたぞ!”と叫びたい」とも語っていたが、そこにあったのは号泣する健気な王者の姿だった。プレスルームで勝利者インタビューを受けても再び涙があふれた。 「不安もあったがいろんな人に支えられて試合にこぎつけられた。楽しかったしみんなも応援してくれた。試合が終わって泣くことなど思いしなかった。それだけボクシングを好きになっているのかなと。やはりいいですね。ボクシング」 昨夏に泥酔したあげく記憶のないまま他人のマンションの駐車場に侵入して自転車のサドルでボコボコに破損させるという事件を起こした。示談が成立したが、週刊誌に暴露され12月19日に予定されていた久田との世界戦が流れてJBCから3か月のライセンス停止、制裁金300万円、社会貢献活動のペナルティを科せられた。 処分を決定する倫理委員会では、「タイトルを剥奪せよ」との厳しい意見も飛ぶほど。自業自得とはいえ、ジムも示談金、制裁金、損害金などを支払う代償を負った。7度防衛している王者の世界戦も地上波に乗らずネット中継に留まった。 練習拠点のある都内に数千万円のマンションを購入し、より強くなるための足場を固めた矢先に、その積み上げてきたものを失う恐怖に襲われた。