「あれを見て、プロではやっていかれへんと…」あの星稜・奥川恭伸を倒して日本一…履正社“伝説の主将”にプロを諦めさせた「衝撃の強肩」の持ち主
いまから5年前、2019年の夏の甲子園。現ヤクルトの奥川恭伸を擁する星稜を破って、初の日本一に輝いたのが履正社(大阪)だった。激戦区の大阪で大阪桐蔭と「二強」と呼ばれる超名門だが、意外にも夏の頂点に立ったのはこの時だけだ。そんな“伝説の世代”の主将が今年、ユニフォームを脱いだ。なぜ彼は23歳という若さで、野球から離れることを決断したのか。なぜ、一度もプロ志望届を出さなかったのか――。その胸の内には、様々な葛藤があった。《NumebrWebインタビュー全3回の2回目/つづきを読む》 【貴重写真】「こ、この選手の強肩が…」名門・履正社初の日本一の主将・野口さんにプロを諦めさせた同級生はこの人…奥川恭伸撃破の2019夏の甲子園での激闘も写真で見る 2018年の夏、高校野球北大阪大会の準決勝。 この年、春夏連覇を目指していた大阪桐蔭と履正社の試合は6回まで互いにゼロ行進が続いていた。 両チームとも3安打ずつ放つも、大阪桐蔭打線は履正社先発の浜内太陽を前に4度の併殺を喫していた。履正社からすれば“してやったり”の展開だった。 だが、均衡は7回に破れた。先頭の藤原恭大(現ロッテ)が三塁打を放ち、根尾昂(現中日)、青地斗舞の適時打などで3点を先制。ところがその裏、履正社は1点を返すと、さらに8回裏には西山虎太郎の適時打などで3点を挙げ、試合をひっくり返したのだ。
大阪桐蔭「最強世代」を9回2死まで追い詰め…
残すは9回の攻撃のみ。履正社は勝利まであと1アウトまでこぎつけた。だが、その最後の1つのアウトが遠かった。8回から再登板した先発の浜内には余力は残っておらず、2死から4連続四球で1点を失った。同点となり、最後は山田健太(現日本生命)の適時打で勝ち越され、4-6で屈した。 キャッチャーだった野口海音(みのん)は振り返る。「浜内さんは自分のボーイズ(松原ボーイズ)の1年先輩で、その夏を終わらせてしまったことが本当に悔しかった。最後に勝ちきれなかったことが、もう……。僕は今まで野球の試合で負けても、“クソッ”って思ったことがなかったんです。あの試合は初めて、心の底から“クソッ”ってなりましたね。桐蔭を倒す。履正社に入ったのは、それも目標だったので」 根尾や柿木蓮の投球に圧倒され、自身も3打数無安打。「とにかく柿木さんのボールが速かった」と脱帽するしかなかった。 翌日から始動した新チームで、野口は主将に任命された。 「すぐには切り替えられなかったですね。グラウンドでは切り替えているようなそぶりを見せましたけど、実際は全然。ただ、キャプテンになった以上はもう負けられないという思いだけはありました」 激戦の余韻が身体にしばらく残っていた。それでも前は見なければならない。自身を必死に奮い立たせながら、灼熱のグラウンドでリスタートを切った。 ただ、今だから思えることがある。 「あの試合でもし勝っていたら、(翌夏の)甲子園で優勝はできていなかったんじゃないかって思うんです。1年生の時も桐蔭に負けましたけど、世間の評価通りというか、何かこう力の差通りだったようなものも感じて。でも、(2年夏の大阪桐蔭戦は)あと1アウトというより、あと1ストライク取っていれば勝っていましたもんね」
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