「金利のある経済」に移行する日本の変化とは、「MASAMITSU 日本株戦略ファンド」運用責任者に聞く
――インフレ期に活躍が期待される銘柄群とは?
大木 インフレ期には、「モノを持っているものが強い」。これは日本のバブル期を経験したからこそ理解できる経験値です。バブルが崩壊して、経営破たんしたダイエーが象徴的ですが、ダイエーがおかしくなったのは、不景気で小売業の業績が悪化するところに重ねて不動産価格の下落が追い打ちをかけたからです。ダイエーがダメになる中で成長を遂げたのはフランチャイズでコンビニを展開するセブンイレブンでした。不動産を持たずに店舗ネットワークを広げていきました。インフレ期に成長したダイエーとは真逆のコンビニチェーンが小売業界のリーダーになったのです。
インフレ期になるとデフレ時代の常識が逆回転します。まず、不動産を持っている企業が強くなります。不動産の流通に関係する企業も好調です。それから、インフレ期には製品価格が値上がりするので企業は設備投資に積極的になってモノを生産することに注力するため、設備投資資金を供給する銀行や債券発行などをサポートする証券といった金融業が活躍します。銀行は金利が上がると利ザヤも拡大するので収益は一段と良くなります。そして、手数料型のビジネスをしている会社も業績が拡大します。1万円に対して3%の手数料を取っていた場合、インフレで商品価格が1万2000円になれば、同じ3%でも手数料の額は大きくなります。不動産仲介業が良くなるのは手数料型ビジネスだからです。商社も基本的には手数料型ビジネスなので大きく業績を伸ばすと考えられます。
一方、インフレ期に避けたいのは政府が価格を決めているような業態です。医薬品は代表格といえます。医薬品業界やドラッグストアはインフレ期には、インフレで潤う業態と比較すると魅力が劣ります。
また、インフレ期は株式市場にとって追い風であることは間違いないのですが、「インフレ疲れ」ということが必ず起こるので、その変化には注意をする必要があります。日本よりもインフレが先行したアメリカで「インフレ疲れ」を感じさせる動きがあります。スターバックスの1-3月の北米売上が3%マイナスだったとか、マクドナルドで5ドルセットという低価格セットが発売されたということがニュースになっています。日本でも、たとえば、牛丼が1000円を超えたらこれまでのように牛丼屋に行くでしょうか? そのような変化に常に気を配って戦略を作っていくことが重要です。