「金利のある経済」に移行する日本の変化とは、「MASAMITSU 日本株戦略ファンド」運用責任者に聞く
2022年以降のインフレにロシアのウクライナ侵攻による世界的な穀物価格やエネルギー価格の上昇の影響があったことは間違いないのですが、ウクライナ戦争がなくても日本は深刻な人手不足による賃金上昇によって内製的なインフレが起きていたと思います。ウクライナ戦争によって輸入物価インフレが理由になって製品価格の上昇が通りやすくなったという側面はあったでしょう。本質は人手不足にあることが重要です。今後は、日本の総人口が減ることに合わせて労働力も減少しますから、賃金は上がり続け、それによってインフレも続くと考えられます。
――人手不足が原因の賃金上昇がインフレをもたらすという話ですが、人手不足についてはAI(人工知能)の発展などでロボットや自動運転などが導入されて人手不足が緩和されませんか?
大木 AIの進化のスピードは異常に速く、現在想定されているよりも社会への普及は速いと考えられます。AIがものを考えて開発を進めるエージェント化も予想よりも早く進んでいます。また、従来は機械では難しいと考えられていた介護ロボットもどんどん実用化に向けて実験が進んでいます。それを考えれば、自動運転によるドライバー不足への対応なども前倒しで進むのでしょうが、実用化には社会の規制やルールの整備も必要であるため、向こう1~2年で一気にロボットが普及するということにはならないでしょう。
人手不足の現状に対する経営者の行動は、まず、人手不足による機会損失を解消したいということで動きます。今年と同程度の賃上げは来年も続くでしょうし、来年中にロボットの導入が始まるということでもなければ、再来年も賃上げが続くというように、向こう数年間は賃上げの圧力は残ることになると思います。
今は賃上げによるインフレが続くという見通しに基づいて投資戦略を作りながら、その次の投資環境については、走りながら考え続けるということをやっています。