本当の原因は「うるさい親」でも「無神経な親戚」でもない…「帰省すると居心地が悪い」と思う人が抱えているもの
■「帰省のハードル」すら移住を後押しする要因に… 先に示したデータは、新型コロナウイルス感染症が拡大する直前、2020年2月と3月にかけて行われた調査に基づく。 その翌年2021年2月に、内閣府が行ったアンケートをみよう。 コロナ禍によって広まったテレワークがきっかけとなり、「地域の食・文化」を重視する地方移住の意向が増えたのである。Uターン、つまり、東京圏から出身地に戻って移住した人たちへのアンケートでも、「親族や知人等縁故がいる」や「生まれ育った地域」といった要素よりも、「地方独自の歴史・伝統」を重視したとの回答が上回った。 統計的手法による分析では、「移住実施者が移住に当たって重視したこと」は、移住への支援、地域の食・文化、地縁・血縁、そして、利便性、という4つの事項が挙げられている。裏を返せば、「地縁・血縁」という、「帰省」にあたってハードルとなる要素すら、移住した人たちにとっては、後押しする要素になっていたのである。 コロナ禍を機に、東京圏での生活を見直し、移住を検討したり、実施したりする。そうした傾向は、さんざん語られてきた。コロナ禍によって、「オンライン帰省」や「リモート帰省」といった、単なるビデオ通話を、わざわざ「帰省」と言い換える傾向が見られた。 ■「帰省ブルー」は世界中で起きている かたや、コロナ禍によって地方に移住した人たちがいて、かたや、コロナを口実に帰省を回避した人たちがいる。東京圏・都市部の人たちにとって、地方は憧れの的なのか、それとも、行きたくない場所なのか。にわかには納得しがたいのではないか。 「地方暮らし」志向と、「帰省ブルー」、この2つの流れは、矛盾しているのだろうか。 帰省に対してさまざまな思いが入り乱れるのは、日本だけではない。 ネットフリックスドラマ「帰省ブルーな私の事情」は、パキスタン系のイギリス人婚約者との結婚にむけて、サウジアラビアにいる家族を説得しようとする女性が主人公である。原題はالعيد جايبةで、直訳すれば「イードを持ってきました」である。この「イード」とは、イスラム教の祝祭日で「祭り」をあらわしており、帰省により明らかになる文化や宗教の違いをあらわしている。 パキスタンとサウジアラビアであれば、「帰省ブルー」にならないのでは。そう直感する人もいるかもしれない。 だが、「帰省ブルー」という表現こそないものの、このドラマのように、世界中で、いろんなスレ違いが起きてきたし、いまも起きており、これからも起きるに違いない。自分であれ、配偶者であれ、その出身地に帰ることは、一筋縄ではいかない。