「ロケーション負け」に打ち勝つ心・技・体/松山英樹のコーチ・黒宮幹仁が語る2024年の歩み<後編>
心技体の「体」の必要性を感じる
黒宮は、心技体のうちの「体」の部分が、日本人選手はまだ足りないとみている。「向こうの現場にいて、いちばん差を感じるのは体の大きさです。日本人選手もだいぶトレーニングへの意識が高まっているのは感じますが、それでもまだ体の厚さに欧米選手と大きな差がある。PGAツアーの選手が街でTシャツとか短パンでいたとしても、やっぱりアスリートと思われる体をしていますよね」 日本人はもっと体をデカくしないと米国で戦えないと黒宮は指摘するが、体のサイズがゴルフにどんな影響を与えるのか。「もちろん飛距離面では有利だと思います。でも、それより大事なことは『体ができていないとスイングもどこかで妥協しなきゃいけなくなる』ということ。理想のやりたい動きがあっても、体が動けないからどこかでやり切れなくなってくる。もったいないなって思ってしまいます」
その点、全く妥協をしない男を、黒宮は普段からそばで見ている。「松山プロが日本に帰ってきて、『ZOZO』や『ダンロップフェニックス』に出ましたが、体の大きさはPGAツアーの選手とそん色ないですよね。むしろ、ウィンダム・クラークが小さく見えるぐらいデカかった。松山プロも必要だと思って体を作っている。体を作るのには普段の食事もあるし、何を摂取してどんなトレーニングするかもあって、彼は常にそこを考えている。体ができたその先にやりたいスイングがあって、やりたいスイングの先にコースで求められるボールフライトがある」 少し難しい話になってきたが、ボールフライトと体の関係性とはどういうことなのだろうか。「すべては逆算なんですよね。コースで打ちたい球(ボールフライト)が先にあって、その球を打つためのスイングは自ずと決まる。そのスイングが打てるようになるために、最終的に体のことにまで考えが及ぶ。つまり目的(ボールフライト)があって体を鍛える。考えることは意外とシンプルなんです。今年は松山プロもそれを証明したと思います。ケガを気にせずちゃんとトレーニングができて体を作れたから、成績が出せたのだと思っています」