伝説のシトロエンが復活「SMトリビュート・コンセプト」──今欲しいのだ、その勇気が。
1970年に登場したシトロエン往年の名車、「SM」が現代に復活した。DSオートモビルが新たに発表したコンセプトカー「SMトリビュート」とは如何なるクルマか。自動車史家の大矢アキオが解説する。 【画像】シトロエンの名車が50年ぶりに復活!「SMトリビュート・コンセプト」の詳細を見る(全63枚)
約50年の空白を埋める
ステランティス・グループのブランドでフランスを本拠とする「DSオートモビル」は2024年9月11日、コンセプトカー「SMトリビュート」を発表した。実車はパリ北郊のシャンティイ城で同月14・15日に開催された自動車エレガンス・コンクールで公開された。 SMトリビュートがモティーフにしたのは、1970年に当時のシトロエン社から発売された量産クーペ「SM」である。社内デザイナーだったロベール・オプロンによる優雅で空力的、優雅かつ前衛的な外観デザインは、自動車界に大きな衝撃をもたらした。 エンジンには提携先であったイタリアのマセラティ製V6が採用されていたほか、4ドアモデル「シトロエンDS」と同じハイドロニューマティック・サスペンションが用いられていた。パワーステアリングやエアコンなど、競合他車では一般的でなかった快適装備も惜しみなく盛り込まれていた。 ちなみに当時の日産自動車のデザインには、シトロエンSMに少なからず影響を受けたものが見受けられる。エクステリアデザインやカラーリングでは1974年「チェリーFⅡクーペ」、ダッシュボードでは1975年「シルビア」がその例である。 しかしシトロエン社がプジョー傘下に入ったのを機に、SMは1975年に生産終了した。 いっぽう今回発表されたSMトリビュートは、デザイン担当VPを務めるティエリー・メトローズ率いるDSオートモビルのパリ・スタジオがデザインし、2020年春にSNSで共有した「#SM2020」が出発点であった。コミュニティ上では、オリジナルSMに愛着をもつ人たちと共に、そのデザインを台無しにしてほしくないと願う人がいた、とメトローズは振り返る。 デザイナーたちは、オリジナルSMが生産終了後も50年にわたり発展を続けていたかのようなイメージを抱きながら作業を続けたという。