伝説のシトロエンが復活「SMトリビュート・コンセプト」──今欲しいのだ、その勇気が。
オリジナルへのオマージュと再解釈
SMトリビュートのデザインを見てゆこう。オリジナルと寸法を比較すると、全長は3cm長い4.94m、全高は2cm高い1.34mにとどめることで基本的なフォルムを守っている。いっぽうで全幅を14cm広い1.98mとすることで、量感と存在感を向上させた。 大胆さと高い空力効率を想起させる軽快さ、細身でありながら筋肉質なサイドのシルエット、そして長いフロントフードをオリジナルから継承。車体色はオリジナルにあったゴールドリーフカラーを再解釈しながら、サテンワニスや(筆者注:錆や緑青の風合いを出せる)パティーナを使用している。黒色との組み合わせは、1930年代にフランスで複数ブランドが2色に塗り分けたクルマをいち早く自動車エレガンス・コンクールに持ち込んだ歴史を意識した。 フロントグリルでもオリジナルが再解釈されている。オリジナルSMのフロント部には通常ラジエターグリルが置かれる位置にヘッドランプモジュールとナンバープレートを収め、広いグラスセクションで覆うという革新的デザインが採用されていた。SMトリビュートでは、中央まで点灯する3Dスクリーンで覆うことで、そのイメージを再現している。サイドを見ると、オリジナルで後輪を隠していたスパッツに新たな解釈が試みられているのがわかる。 室内でもオリジナルSMの意匠が数々引き継がれている。ダッシュボード上部の特徴的な形状や、楕円のメーター類、水平基調のクッションを備えたSMの布張りシートがその例である。 そのかたわらでSMのアヴァンギャルド精神に従い、バイ・ワイヤ式のステアリングの前に広がる情報表示は独立ディスプレイではなく、限りなくダッシュボードに融合させている。センターコンソールは湾曲型だ。 メトローズは「チームは野心的なプロジェクトとして楽しみました」と振り返る。ただし、現実と乖離したコンセプトカーを避けるべく、現行モデルと将来のプロジェクトにつながる多くの要素を含めたという。