神津善行「妻・中村メイコを大晦日に見送って1年。茅ヶ崎での出来事は、今も謎のまま」
◆最後の誕生日プレゼント 実は、こんなことがありました。僕の誕生日は1月2日で、毎年、必ずバースデーカードをくれたんだけど、彼女が亡くなった時点でもうカードをもらえないなと思っていた。ところが元日の夜、机の引き出しを開けたら原稿用紙が入っていて、「ハッピー・バースデー」と書いてあったんです。 「心よりお祝い申し上げます。いつの間にやら、長い長い旅路。こんな手のかかるヘンテコな女を長々と面倒見てくださって、泣き虫の私は、ここまで書くだけで涙がぽろぽろです……」 そして毎朝、僕が朝食を用意していることへの感謝の言葉が綴られ、締めに「おとうさん! 神津サン! 愛してます!」。 女房は死ぬ前に、「愛してます」と書いてくれた。これ以上の誕生日プレゼントはありません。そんな彼女の気持ちが、いじらしくて、かわいそうで、読み返すたびに泣いてしまいます。 でも、あまり泣いてばかりいると、心配をかけてしまいます。どうせもうすぐ向こうで会えるんですから。一周忌を機に、もうメソメソするのはやめようと思います。 (構成=篠藤ゆり、撮影=藤澤靖子)
神津善行
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