石田徹也のオークションレコードが更新。1996年の作品が約1億9300万円で落札
12月3日に香港のボナムズで行われた現代美術オークションにおいて、石田徹也 の《ベルトコンベヤーの男たち》(1996)が約1001万香港ドル(約1億9300万円)で落札され、石田にとっての新たなオークション記録を樹立した。 石田は1973年に生まれ、2005年に31歳で逝去した。現代の日本社会における疎外感や不安を描き出した作品で知られている。その作品はしばしば歪んだイメージやシュールな技法を用い、個人を機械や部品、消費財として描き、1990年代の経済的な不況を背景に、社会のなかで格闘し、絶望する世代を表現している。 今回の作品は、石田の短い10年のキャリアのなかで現存する約200点の作品のひとつ。作品には、スーツを着たサラリーマンたちがエスカレーターに横たわり、単調な日常に囚われ、自己や自由を失っていく様子が描かれている。人々が巨大な経済機械の歯車となり、社会の構造によって自由が制約され、独立した思考が抑え込まれていく様子を示している。 ボナムズ・アジア現代美術部門の責任者であるマルチェロ・クワンは、今回の結果について次のようにコメントしている。「石田徹也の新たなオークション記録が樹立されたことを非常に嬉しく思います。彼の作品は、現代社会が抱える苦悩や抑圧をシュールに描き出し、彼の誠実さ、粘り強さ、人間への思いやりが表れています。石田の作品に対するマーケットの成長を目の当たりにし、ユニークで学術的に重要な作品に対する評価が高まっていることを実感しています。この珍しく、かつ感動的な作品の販売をお任せいただけたことを光栄に思います」。 石田の作品は、その死後に急速に注目を集め始め、2006年にその初めての美術館個展「飛べなくなった人 石田徹也 青春の自画像」が静岡の駿府博物館で開催。その後、静岡県立美術館や練馬区立美術館 などでも個展が開催され、2015年にはヴェネチア・ビエンナーレに作品が出展され、19年にはマドリードのソフィア王妃芸術センターで回顧展が開催されるなど、世界中の鑑賞者にも深い感銘を与えた。 また昨年、メガギャラリーのガゴシアンが石田の作品をグローバルに取り扱い始め、同年9月にはニューヨークのギャラリーで個展を開催し 、マーケットでの評価を高めるきっかけをつくった。石田のこれまでのオークションレポートを記録したのも今回の作品で、2022年7月に香港のサザビーズで806万香港ドルで落札されている。