よい行いをしている人が、がんなどで亡くなるケースを多く見てきた医師・小林弘幸「善行を積めばいつか報われるなんて簡単に言えない。それでも…」
◆「あのとき、あの行動をしていたおかげで助かった」はよくあること こうした教えは、もしかしたら人の世のとても重要な点を指摘しているのかもしれません。それというのも、よい行いの場合も、悪い行いの場合も、自分がやったことが、巡り巡って自分に返ってくるのは、実生活でも「けっこうよくあること」だからです。 たとえば、あなたの部下が会社に損害を与える大失敗をしたとしましょう。そんなとき、上司のあなたは「自分の指導力がなかったせいだ」と部下をかばい、全責任を引き受けたとします。 いったんは降格されるかもしれませんが、あなたの取った行動は周りから称賛され、多くの部下から信望を集め、それがもとで後に大出世を果たすことになった――。こういう話、わりとよく聞きますよね。 私自身の経験を振り返っても、「あのときによい行いをしておいたことが、結果的に自分の立場を押し上げてくれた」「以前、力を貸したあの人が自分の力になってくれたからこそ、この難局を乗り越えられた」といったことが何回もあります。 そう考えると、やはりこの世の中は「自分が行ったことは、すべて自分に返ってくる」という流れになっているのではないかと思うのです。
◆自分の行いに誇りを持って生きていける もちろん、どんなによい行いをしてきても、一向に報われないケースもあるでしょう。私はこれまで多くの患者さんに接してきて、誰にでも親切で情け深く、日々善行ばかり積んできたような人が、がんなどの難病に冒されて亡くなっていったケースもたくさん見てきています。 それに、その生涯で多くの善行を積んできたような人が大きな災害で不幸な亡くなり方をするケースも少なくないでしょう。そういう方々も数多くいらっしゃるので、「善行を積んでいれば、いつかよいことが起こる」なんて、そう簡単には言えないということも重々承知しています。 しかし、それでも私は「陰徳陽報」「因果応報」「情けは人の為ならず」といった言葉が諭す教えを積極的に実践していくべきだと信じて疑いません。 「自分がやったことは、いつか自分に返ってくる」という心構えで行動をしていれば、よいことをすればなんらかの恩恵が返ってくるわけで、ならば誰しも積極的によい行いをするようになるでしょう。 また、悪い行いをすれば自業自得で災難が返ってくるわけですから、誰しも悪いことをしようと思わなくなるのではないでしょうか。 それに、どんなことも「結局、自分自身が招いたことだ」という自己責任の意識も強まるでしょうから、たとえ悪い結果が出たりつらい状況が続いたりしても、悔んだりいじけたりすることなく、日々の自分の行いに誇りを持ってまっすぐ前を向いて生きていけるのではないでしょうか。
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