マスク氏、欧州の極右を後押し 進歩派は警戒
だが、ウェス・ストリーティング保健・社会福祉相が3日、マスク氏の批判に反応したことで、英政府の綱渡りのような慎重な駆け引きが浮き彫りになった。
ストリーティング氏はITVニュースに対し、マスク氏のコメントは「誤った判断であり、間違いなく誤った情報に基づいている」と反論する一方で、すかさず、「われわれはマスク氏に協力する用意はある。マスク氏はXで、英国や他の国々がこの深刻な問題に対処する支えとなるような大きな枠割を担っていると思う」とフォローした。
政治コメンテーターのパトリック・マグワイア氏は3日付の英紙タイムズで、「2025年が幕を開け、マスク氏はもはや英国政治に対する偏見に満ちたコメンテーターではなく、内部の有力者だ」と指摘した。
衛星放送スカイニューズ・テレビの政治記者ベン・ブロック氏はXで、「英政府はイーロン・マスク氏と彼の介入への対処法を考える必要がある。これまでの対応をいつまでも続けるわけにはいかない」と指摘した。
■「独裁者」
マスク氏が欧州で標的にしているのは英国だけではない。
ハンガリーの極右、オルバン・ビクトル首相とも面会した。オルバン氏は最近、米フロリダ州でトランプ氏とも会談している。
マスク氏はまた、ドイツで2月に実施される連邦議会(下院)選挙を前に、同国の極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への強い支持を表明したとして、ドイツ政府への介入だと非難されている。
1月9日にはXで、AfDのアリス・ワイデル共同代表との対談を主催する。
ルーマニアについても、ロシアが介入した可能性を指摘して大統領選を無効とした判事らを「独裁者」と非難。
さらに、1945年以降のイタリアで最も右寄りの指導者であるジョルジャ・メローニ首相を熱烈に支持。これに対し、メローニ氏もマスク氏を「天才」と称賛している。
■政治とビジネス
専門家は、マスク氏の政治的な取り組みと経済的利益との密接な結び付きを指摘している。
新自由主義に関する批判的な研究で知られるカナダ・トロントのヨーク大学のイラン・カプール教授は、マスク氏とトランプ氏にとって「民主主義や議論、意見の不一致、国家福祉制度はすべてビジネスの邪魔になる」と主張。