マイナカードを「保険証」として使えば、今使っている「お薬手帳」は不要ですか? マイナカードだと、履歴の情報が“最新ではない”とも聞くのですが、実際どんなメリットがありますか? 注意点もあるのでしょうか?
マイナンバーカードを「保険証」として使い、自身の薬の履歴や過去の特定健診の情報などの提供に同意すれば、病院や薬局でより適切な診断・処方を受けることができる、と言われています。 しかし、2024年4月時点でのマイナ保険証の利用率は7%弱。薬の処方履歴の管理に、これまでどおり紙の「お薬手帳」を利用している人も多いのではないでしょうか。 本記事では、マイナンバーカードを保険証として使用するメリットと、お薬手帳との使い分けについて解説します。 ▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
マイナンバーカード保険証のメリットは
厚生労働省がマイナンバーカードの健康保険証利用のメリットとして一番に挙げているのが「データに基づくより良い医療が受けられる」という点です(図表1)。 厚労省のサイトでは、「過去に処方されたお薬や特定健診等の情報を、医師・歯科医師・薬剤師に口頭で正しく伝えることは大変ですが、マイナンバーカードで受付・情報提供に同意すれば、過去の処方薬や特定健診などの情報を医師・薬剤師にスムーズに共有できます。 初めて受診する医療機関・薬局でも、より良い医療が受けられます」という旨の説明がなされています。 図表1
厚生労働省 マイナンバーカードの健康保険証利用について
マイナンバーカード保険証の注意点とは?
ただしこの説明には、注意点があります。医療機関等での情報は行政手続のオンライン窓口である「マイナポータル」に連携されますが、マイナポータルへの情報反映にはタイムラグがあるからです。 マイナポータルサイトで、この点について「よくある質問」として説明されています。 マイナポータルに情報が反映されるのは、原則として毎月11日であり、その前月分までの情報に限られます。しかも、その情報の基になっているのは、保険医療機関・保険薬局が審査支払機関(保険者から審査支払を委託された機関)へ電子請求した診療・調剤報酬明細書の情報です。 医療機関や薬局から審査支払機関への報告が遅れていた場合などは、前月分以前の診療・薬剤情報、薬(薬剤情報)が表示されないことも起こります。また、自由診療などの理由で、診療・調剤報酬明細書に記載されない情報も反映されません。 厚生労働省のサイトを一読しただけでは、診療や調剤の記録がリアルタイムでマイナポータルに反映されているものと誤解しかねません。 頻繁に医療機関にかかる人にとっては、1ヶ月以上前のデータしか反映されないのは大きな問題です。マイナポータルの情報だけに頼っていては、それこそ薬の重複処方や、すでに使っている薬と飲み合わせが悪い薬の処方(薬の飲み合わせ事故)が生じかねません。 ■現場の医師から懸念の声が上がっている 現場の医師からは、マイナンバー保険証に直近のデータが閲覧できないことを理由に、次のような声が上がっています。 「たとえば、糖尿病の患者さんが午前中に糖尿病クリニックに来て、午後や翌日に(糖尿病の3大合併症である)網膜症の治療で眼科に来ることはよくある。……(略)……結局、『お薬手帳』を持ってきてもらうのが便利、ということになる」 ■日本薬剤師会からも注意喚起されている 日本薬剤師会からも次のように注意喚起されています。 「(マイナンバーカードで)医薬品の情報を見てもらえるということは、皆さんがお使いの『お薬手帳』の代わりになると思われるかもしれませんが、現段階では区別してお考えください。マイナンバーカードを利用した医薬品の情報が見られるようになるまで、現段階では1か月程度の時間差が発生してしまいます。お薬手帳にはご自身のアレルギーや、過去に副作用が出たお薬、市販薬の使用状況なども記録し、今後も引き続き活用していきましょう」