【注目校に聞く】市川(上)16年目のSSHは教科の枠を越えた理系教育 「どんどん学校の外に出て」
親から受ける「第一教育」、教師から学ぶ「第二教育」に対し、自ら主体的に学ぶ「第三教育」が市川中学校・高校(千葉県市川市)の教育方針です。教科の枠にとらわれない「リベラルアーツゼミ」や「市川サイエンス」も定着。文部科学省が指定するスーパーサイエンスハイスクール(SSH)も4期目に入りました。校長3年目の及川秀二先生に取り組みについて聞きました。
【話しを聞いた人】市川中学校・高校校長 及川秀二さん
(おいかわ・しゅうじ) 東京生まれ。市川中学校・市川高校を卒業して大学は数学科へ進学。1983年に母校に数学教員として奉職。広報部長、国際教育部長、教頭、副校長を経て2022年に第12代校長に就任した。
SSH活動は教育の推進力
――スーパーサイエンスハイスクール(SSH)も4期目ですね。 2009年度から1期5年間なので、今年で16年目です。本校ではSSHの活動が教育の推進力になっているので、4期の申請にあたり担当者で話し合った時も「ぜひ、続けましょう」となりました。 文部科学省からは、理系の教員や生徒だけではなく学校全体の活動にすること、SSHで蓄えたノウハウをどんどんオープンにすることを求められています。これらを踏まえて、4期では「教科の枠組みを越えた学際的な研究の推進」 「これまでのノウハウを取りまとめた市川モデルの発信」そして「低学年からの課題研究に向けた取り組み」というコンセプトで申請しました。 ――今期は、どんな新しいことに取り組んでいるのですか。 「学際的に学ぶ」ということです。これまで行ってきたこともありますが、化学は化学室、生物は生物室というように教科室に閉じこもらず、大きな教室を使って化学系の研究に生物の教員が、生物系を化学の教員がアドバイスする。さらに教科の枠を越えたコラボレーション授業もあります。例えば、先日の生物の授業では、熱帯性植物の光合成の特徴について説明をした後、地理の教員が登場し赤道直下の国々の食糧事情について解説していました。 こうした授業は全教員に公開され、教科間で新たな展開が始まります。中学の理科の授業では1人の教員で行うのではなく、前半・後半を2人で分けて回したり、化学と物理を行ったり来たりしながら授業を行なっています。 また、近隣に虫や魚はいるわ、たまにタヌキは出てくるわ、自然に恵まれているので学校周辺で観察会や巡検ができるのも、本校ならではです。レポートもよく書きます。 現在、理系進学者は、全体では6割程度ですが、女子では約5割。女子は日本的な「女子に理系は向かない」というバイアスを敏感に感じ取っているかもしれません。そこで、土曜講座で中村桂子さん(JT生命誌研究館名誉館長)のような男女の枠組みを越えて、第一線で活躍している“本物の方々”の講演を聴講すると、生徒も自分で自分を縛っていたことに気づいているようです。 ――市川のSSHの特徴は、どこにあると思いますか。 まずは高1の時にじっくりと研究テーマを決めています。SSHのメインは高2ですが、高1の秋に文理分けの届けを出してすぐにSSHの概要説明会を開き、研究テーマの決め方を説明します。皆、理系を選択する時点で、ある程度やりたいことがあるようです。中には先輩の実験を引き継ぐパターンもあります。 発表会は年に3回。最初は6月に開催する構想発表会です。全国のSSH校や大学の教員が来校し、ポスター発表を聞いて内容が甘ければしっかりダメ出しされますし、本校の教員も参加して講評します。ここでぶれたら、その後の半年を棒に振ることになるので時間をかけます。