【注目校に聞く】市川(上)16年目のSSHは教科の枠を越えた理系教育 「どんどん学校の外に出て」
たくさんの「場」を提供
――例えば、どのような研究がありますか。 1000年以上も前の超新星爆発を世界中の古文書で調べて、地学の見地から研究した生徒がいます。この生徒は、日本地球惑星科学連合2024年大会で最優秀賞を授賞しました。中学でも今年度の「科学の甲子園ジュニア」の千葉県大会で本校の1年生チームが優勝し12月の全国大会に出場します。いろいろなことに挑戦しているので、生徒の活躍も多彩です。 ――入学した時点で、何かに秀でていたり、目立つものがあったりする生徒が多いのですか。 中学受験生は、何かしらのトガリを持っていると思いますね。算数好きとか、社会好きとか。校内には土曜講座や様々な国際研修、リベラルアーツゼミ、市川アカデメイア(古典教養セミナー)などがあり、さらに学外で行われる数多くのイベントを投げかけています。私が「他流試合」と呼んでいるこうした経験がさらに磨きをかけるのだと思います。 大切なのは、たくさんの「場」の提供です。選択肢が少ないと「ハマらない」生徒も出ますが、たくさん仕掛けるので、生徒が自分にとっての何かを見つけることができます。 ――「場」の提供を推進するようになったのは、いつ頃からですか。 以前から、学校で蓄えた知識を外に行って試す他流試合を勧めていました。意識的に用意するようになったのは最近です。課外活動の推進を担う教育研究部を設けて他流試合を奨励するようになりました。学校の外に出て、人と出会い、様々な発見や困難に立ち向かう。今の自分がどれだけ通用するのかに気づくためにも、どんどん学校の外に出てほしいですね。 また、中高時代は、自分を変えたいと悩んでいたり、今取り組んでいる勉強がどの様に自分の将来に繋がるのかと思っていたりする生徒もいるので、学んだことを試せる場を用意することは大切です。 そうした1年間の成果を3月の「市川アカデミックデイ」で共有します。発表者は自由に1年間の活動をプレゼンします。後輩は先輩の発表を聞いて、次は自分の番と「自己回転」をはじめる。これを「エバンジェリスト(伝道師)活動」と言っています。 ――アカデミックデイでエバンジェリストは何人くらい登壇するのですか。 上限を設けていないので年によって異なりますが、30~40人です。自主的にミニアカデミックデイを開催している学年もあります。学校の中に、自己回転する力が出てきたのだと感じています。 また、2年前にある卒業生の寄付を財源とした「HKなずな奨学金」制度もできました。海外大学に進学する生徒や、国内学を問わず特色ある研究や活動にチャレンジする生徒を資金面で支援しています。中高時代のこうした経験は、将来きっと役に立ちます。