【注目校に聞く】市川(上)16年目のSSHは教科の枠を越えた理系教育 「どんどん学校の外に出て」
保護者の声にはヒントがいっぱい
――自分の年齢が上がると、生徒や保護者とは年齢が離れていきますが、感覚はずれたりしませんか。 本校では通常の保護者会、クラス懇談会、個人面談に加えて、年に1回 保護者の会(後援会)主催の「保護者交流会」があります。会は2部構成で第1部は講演会を行っています。以前は予備校や子育て支援の専門家にご登壇していただきましたが、この2~3年は社会人や大学生になった卒業生のパネルディスカッションを行っています。学校生活、進路選択から現在までの多岐にわる話は、わが子の少し先が想像できると好評です。 第2部は学年を縦割りにした小グループのディスカッションです。「このままクラブを続けたら勉強が心配」「思春期の子どもの接し方に悩んでいる」というような悩みを、先輩のお母さんが「大丈夫」と一言言うだけで安心してもらえます。私ら教員も入って、どんな意見もお聞きします。ここで300件くらい届く声をカテゴリー分けし、管理職が分担して回答書を作り配信しています。 ――とても丁寧な対応ですね。 私たちも皆さんの思いを知りたいんです。保護者の声にはヒントがいっぱいありますし、勉強になります。もちろん、できることとできないことがあります。でも、例えば、食堂は作らないのが学校の方針ですけれど、学内にコンビニがありますよ、お弁当の注文を始めますよというように、できないだけで終わらせず対案を出します。 お弁当といえば、自分で作ったお弁当の人気投票をしたことがあります。キャラ弁があったり、なぜかクッキーを焼いてきたりした子もいて、楽しそうにやっていましたね。 ――勉強以外も楽しそうです。 本校創立者の古賀米吉先生が大切にしていたキーワードが「楽しい学園生活」でした。古賀先生は、私が生徒の頃 学校は楽しくないとだめなんだ、いつも仰っていました。ここでいう楽しさとは知的な向上心をさしていますが、「楽しいことは、まずやってみよう」という精神が受け継がれているのだと思います。 男子校時代、生徒の居場所は教室や図書館、部室ぐらい。下校時刻を過ぎたら校舎内は人はまばらで、良い意味でも悪い意味でもさっぱりした感じがありました。ところが2003年の共学化以来、女子がひとつひとつのイベントや学校生活を愛しむように楽しんでいるのが男子にも伝播したように思います。 今はイベントの運営は生徒に任せ、教員は見守っています。例えば中学の運動会は1学年1日ずつ開催しています。さすがに中1は教員と相談しながら進めますが、完成度が高いのは経験豊富な中3。見ていておもしろいのは中2ですね。 ――どんなふうにおもしろいのでしょう。 なかなか競技が始まらないとか、障害物競走なのにはしごが出てこないとか、大玉転がしなのに玉がどこかに行っているとか。でも、翌年は見事に自分たちでやり切ります。生徒は失敗しても、来年は頑張るぞと気持ちを切り替えますし、終了時間が1時間延びるとか玉がないとか、大したことではないですよ。でも、やらせっぱなしはだめ。見守るのとは違います。