【注目校に聞く】市川(上)16年目のSSHは教科の枠を越えた理系教育 「どんどん学校の外に出て」
進路指導はコーチング
――違いは、どんなところに表れますか。 大学受験も同じです。年々進学実績が伸びているとの評価をいただいていますが、生徒はあまり変わっていません。私ら教員のメンタリティーが変わったんです。以前は一生懸命、悔いのないように教え尽くすティーチングをしていました。そうすると、生徒は教員に頼りきってしまいます。そこで、我々の姿勢を生徒の背中を後押しするコーチングに変えました。 子どもたちは自分でやれるんですよね。 私が考える進学校の定義とは、進学実績とかではなく、ある時期になると自然発生的に、そのフロアにいると勉強をしないといたたまれない雰囲気になる学校。本校の場合だと、文化祭が終わって、修学旅行から帰ってきた翌日から高2のフロアは雰囲気がガラッと変わります。 ――進路指導は、どのような体制ですか。 進路指導部は、データバンク的なところです。本校の進路指導を主導するのは、基本的には学年です。学年主任が、その学年の進路指導部長的な役割を担います。受験のエキスパートに聞いてきなさいという指導では限界があるので、誰でも進路指導ができ、個人面談でも的確なアドバイスができるように教員も勉強しています。そうした取り組みが学校への信頼感や安心感に繋がっています。 また、中高6年間を3ステージに分けています。最初の2年間は勉強の仕方や物事の考え方を学ぶ時期。中学に入ったら、本を読み、手で文章を書き、辞書を引く、という指導を重視しています。思う存分本を読むことは創立者の夢でもありましたし、特に読書を勧めています。ですから本校は、タブレットを持つのは中3からにしています。また、この時期はスケジュール手帳を最大限に活用しています。 次の2年間は他流試合の時期。学んだことを試してこいと学校の外に出ることを勧めています。この2年間で自分の将来像の一端が見えてくるはずです。 そして最後の2年間は、学んだことの確認期。大学受験をゴールにしない、自分の将来を逆算した大学選択をしっかり考えてもらいたいと思っています。 ――SSHで学際というキーワードが出ましたが、高2で文系理系分けがありますね。いつかやめるのですか。 現在の大学入試のシステムのままだと、文系・理系分けが必要だと思います。ただ、多くの文系大学でも理数科目は必須ですし、理系でも経済分野や哲学などに興味を持つ生徒も少なくありません。その流れに沿って学校も変わっていくべきだと思っています。海外大に行くとしたら文系・理系はさほど意味がありませんから。
市川理香 ライター