東芝の売上は「ピーク時の半分以下」に。白物家電やテレビを手放した、かつての“一流メーカー”の今
「不適切会計」という名の粉飾決算
東芝は2008年度から7年間、約2,200億円の利益を水増しして粉飾決算を行いました。同社は「不適切会計」のフレーズを多用していますが、紛れもない粉飾決算です。“不適切”という単語は不正した企業が使いたがる傾向にあります。内部告発をきっかけに証券取引所等監視委員会から開示検査を受けたことで不正が明らかとなり、2015年5月に第三者委員会が設置され、不正の調査が始まりました。 パソコン事業ではバイセル取引を多用して利益を水増ししたほか、テレビ事業では「キャリーオーバー」と呼んで経費計上の先送りが常態化しました。海外勢の台頭で業績が悪化する消費者向け事業を中心に不正を行ったのです。当時の経営陣は「チャレンジ」という言葉に置き換え、不正を命じたと言われています。粉飾決算を行った結果、東芝は信用とブランド力を失いました。しかし、業績にとって大打撃となったのは後述する米国の原発事業です。
WH社の大幅赤字で債務超過に陥る
消費者向け事業が難航していた東芝は原発事業に賭け、2006年に英・原子力事業のWH社(ウェスチングハウス社。正確には2社)を買収しました。東芝の原発は沸騰水型(BWR)である一方、WH社は加圧水炉型(PWR)です。世界の主流はPWR型であり、原発で海外展開を強化したい東芝はWH社を欲していました。しかし企業価値が2,000億円といわれるWHを6,000億円で取得しており、この時点で甘さが露になっています。 東芝傘下に入ったWH社は2008年、米国で原発4基の建設プロジェクトを受注しました。しかし1979年のスリーマイル島原発事故以降、米国では原発の新設が凍結されていたため工事は大幅に遅れ、2011年の福島第一原発事故に伴う規制強化も相まって工期はさらに遅れました。工期の遅れで電力会社などとトラブルになり、これを抑えるためかWHは相手方の建設企業S&W社を買収しましたが、S&W社のせいで東芝は数千億円の減損を抱えることになります。この点でも東芝によるガバナンスの甘さが現れています。 WH社に関連して東芝は再び決算に対して不正を働こうとしたのか、2017年3月期の決算に対して監査法人は意見不表明とし、決算に“お墨付き”を与えませんでした。結局、17年3月期の決算発表は8月まで延期され、最終赤字9,657億円により東芝は7,303億円の債務超過に陥りました。