最古のオタマジャクシの化石を発見、1億6100万年前、カエルの劇的な変態の記録を更新
オタマジャクシとカエルのアベコベ
太古のオタマジャクシはおそらく、大きさも食性も一部の現生種と似ていたのだろう。ウシガエルのオタマジャクシは石に付いた藻をこすり落として吸い込む。そして時折、巨大に成長する。 一方、アルゼンチン原産の興味深い種アベコベガエル(Pseudis paradoxa)は、おとなは5センチほどなのに対し、オタマジャクシは25センチにも成長する。 ほとんどのカエルは、おとなの段階で最も大きくなる傾向にある。N. degiustoiのオタマジャクシがなぜこれほど成長し、巨大化したのかは不明だ。 「このオタマジャクシの保存状態が非常に良好なことに驚いています」とアベコベガエルについて研究するアルゼンチン、サルタ国立大学の動物学者マリッサ・ファブレジ氏は話す。「巨大なオタマジャクシの大きさを説明するのは難しいのですが、彼らの進化を理解するうえで重要な発見です」 化石には発達した軟骨、さらには骨格の一部まで刻まれており、オタマジャクシは変態直前の状態だったとチュリバー氏は述べている。つまり、オタマジャクシがおとなより大きかった可能性は低い。 マチルダ層で見つかったおとなは、このオタマジャクシとほぼ同じ長さのものが多い。それでも、N. degiustoiの巨大なオタマジャクシと現代のアベコベガエルには何か関連があるかもしれない。 アベコベガエルは、マチルダ層で化石として発見されたカエルたちと同様、雨量が少ないと干上がってしまう水たまりに暮らしている。おかげで、魚類による競争や補食の心配があまりない。その結果、オタマジャクシはオタマジャクシの段階に長くとどまり、おとなになる前に、大きく成長できる。そして、地上の餌に移行する前に、水たまりの餌を最大限に活用できる。 1億6000万年以上前のオタマジャクシが発見されたことは、カエルの生き方が成功を収めた証拠だとアニョリン氏は述べている。しかし現在、多くのカエルが苦境に立たされている。カエルは水陸両方の生息地に依存しているため、人のかく乱に対して二重の影響を受けることになる。「彼らを成功に導いた変態が今、彼らを絶滅へと導いています」
文=Tim Vernimmen/訳=米井香織